第19話
「お待たせしました」
緒方らが部屋から出てきて10分以上経過し、そろそろノックでもしようかとしたころ、ようやく二人は出てきた。ズボンスタイルにサングラス。ふわりと揺れる裾はライラック色だ。
「いいじゃないかね。よく似合ってる」
梁塵が笑いながら二人を誉める。さて、と言って、梁塵はさらに別の部屋へと案内する。ああそうだ、何かを思い出したように4人へと振り返った。
「それぞれ必要以外の荷物は置いていきな。預かっておいてやるよ。なにかことがあれば情報屋のところに送っておいてやるから。そこからそれぞれの所属団体へと再配達される、もちろん着払いでな」
「必要なものはもう背負っている。服はあとで取りに来ることにするさ。それと、絶対に何か持っていくんじゃないぞ」
緒方がそこだけを特に強調する。
「こちらも客商売だ。客の信頼を裏切るようなことはしないよ」
梁塵が言いたいことは言ったようで、その別室へと案内する。ここだ、と先ほどとよく似た扉の前に立つ。
「必要なものは渡しておく。緊急連絡用の携帯電話、ガラケーだな、それと金。外の通貨も使えるが、この地域だけでしか通用しない通貨を使うんだ。方東組が発効している通貨で、KATという。10000KATは外での通貨でいえば1円に相当する計算になる」
「なるほど、そりゃ外の通貨を持ち込むなというわな」
平塚がつぶやく。1万円もあればこの地域では大金持ちの分類になるだろう。強盗も多い、というか日常な地域だ。それならばあらかじめしておかないことが良いということも当然のことだ。
「他に必要だと思うものについては、この部屋の中に入ってるから、好きなものを持っていけばいい」
梁塵が今度は一緒に、4人とともに部屋の中に入った。




