第18話
ガレージはどうやら表向きは物置部屋らしい。部屋から胃保出ると、普通の家のような廊下へと出る。土足でもいいように、はたまたほかに理由があるのか、廊下は全面がコンクリートで塗装されていた。
「警吏官や警察官だってことは、ここじゃ話さないほうがいいよ。どうあってもいい顔されることはないからね。あと、あなたたちも命は大切でしょ」
梁塵は、何やら薄笑いを浮かべつつも緒方らに話しかける。
「て、ことで、その窮屈なスーツはこの部屋で脱いで、適当な服に着替えてもらおうか。その方が良いと思うよ、方東組に間違えられることもないだろうし」
廊下にはいくつか同じような扉があり、そのうちの一つに緒方らをいれさせる。そこは物置小屋のようなもので、服がたくさん飾ってあった。少し流行おくれのものが多いが、右側は男性用、左側が女性用と固まっている。サイズも子供用のものからもっと大きい、2mはありそうな人用のものまで、幅広いラインナップがあった。
「私は外で待っているから、着替えはそこにある更衣室使ってね」
更衣室は部屋のドアとは反対側に3つあり、カーテンで目隠しができるようになっている。さらに全身鏡もあって、着付けを確認することもできるようだ。じゃあごゆっくり、と梁塵は手を振りながらドアを閉めた。
「確かに、この服装なら目立つかもな」
平塚がスーツを全身鏡に映しつつ、つぶやいた。それを片目で見ていた緒方は、とにかくさっさと済ましたいらしく、服を選んでいた。根来と放出はというと、キャッキャッと嬉しそうに服選びにいそしんでいる。平塚も、緒方に並んで服の選定に入った。
しばらく悩んで、選んでは取り替えてを繰り返し、平塚緒方が先に部屋から出てきた。
「おや、後のお二人は」
「女性陣はファッションショーの真っ最中。も少しはかかるだろう」
疲れた顔をしつつ、それでもなお仕事をするつもりは満タンな緒方が梁塵へと答えた。
「女性はどうしても時間かかるからねぇ。仕方ないと思って割り切るしかないかな」
梁塵が緒方に言いつつ、上から下までじっくりと見ていた。見られていることに気づいた緒方が梁塵に尋ねる。
「……何か変か」
「いや、変じゃない。むしろ見た目年齢相応だと思って」
半そで襟付きで首元がU字になっている綿でできた上衣に、ちらりと首元から下着であるシャツが覗いている。ズボンはというと、しっかりプレスされ整えられたスーツスタイルの者を吐いていた。ベルトはどうやらスーツのものを流用しているらしい。では、と梁塵は今度は平塚へと視線を動かす。平塚派といえば、ラフな格好だ。半そでのポロシャツを首元から一つ離れたところまでボタンを留め、ズボンはジーンズ生地のものだ。こちらもベルトを使って留めている。荷物はというと、部屋に置いておくわけもいかないようで、持ってきたそのままリュックのような形でそれぞれ背負っていた。




