第15話
「……よくわかった。やはり、方東組が中心のようだな」
「この地域では、ですがね」
緒方の言葉に、注釈を情報屋が付ける。
「どうせ、関西エリアでの魔術ドラッグの元締めがここだっていうだけで、他の地方だと他の元締めがいるって言いたいんだろ」
緒方の言葉に、ますますにんまりと情報屋は表情を変えた。
「よくわかりましたね。方東組をはじめとして大阪府下には15人程度。全国では数百人、あるいはそれ以下の人数が魔術ドラッグの作成者として名をはせています。名前はお教えできませんが」
思わずピクリと緒方の指が動く。魔法を使ってでも口を割らせようとしたようだが、その反応を見せたのは一瞬だけ。どうせここでは魔術の類は使えないし、情報屋を殺したところで得られるものはないだろう。口を割りそうにないし、殺しても死ななさそうだった。
「その全国の勢力の中でも最大となるのがこの壁の向こう、負犬地区の中にいる方東組、ということです。魔術耐性がない人は入るのはやめていただいているんですけど、今回は特別。お二人とも警察官みたいですしね、もっとも、中での出来事は私は一切関知しませんので、何事も自己責任でお願いします。よろしいですね」
「そんなもの、百も承知だ」
代表して緒方が二人の代わりに答えた。だが二人も警察官とは言え女性であるのは間違いない。情報屋が特別のおまけといって、御札を4枚渡してきた。
「なんだこれは」
「2枚は警察官のお二人用です。暴漢に襲われた時に使ったら、最寄りの警吏所か警察署、もしくは警察交番まで自動で転送をしてくれます。もう2枚は緊急脱出用ですね。これらは負犬地区のゲートへと自動転送してくれるものです。ただ、おまけとしてあげるにはなかなかに価値があるものでしてね。1枚につき1人の2枚が限度です」
「ないよりはまし、と思っておくさ。どうせお守りみたいなものだしな」
そういって、暴漢用の2枚は根来と放出に渡し、残り2枚はそのまま緒方が持つことにした。




