第13話
お土産として買ったのは、緒方が選んだ手野駅前にあるパティスリーの焼き菓子詰め合わせのギフトセットだった。ちなみに値段は税込3980円。経費で落ちるらしいが、そこそこなものを買うにとどめていた。
「あーあ、結局ここに来るのかぁ……」
引き連れ、いやいやながらも緒方らがやってきたのは、2階建ての一軒家だった。島と呼ばれるだけあって、周囲とは堀のようなもので隔離されている。ここには、畑や家が並んでいるが、畑は誰かが手を入れているようで、今は何かの植物が植わっているのが見える。なにかは緒方らには分からなかった。玄関に手をかけ、ゆっくりと開ける。カランカランとカウベルのような玄関ベルが鳴り、中の人に来客があったことを知らせた。
「いらっしゃいませ」
15歳くらいの女性が、椅子に座ったままで出迎えてくれる。廊下のように一直線に玄関から向かう先には、カウンターが一つ、今は誰もいないが、店主がそこにはいるはずなのだろう。彼女が座る椅子は、周りのよくわからないものと一緒に積まれていたものなのかもしれない。ただ実用に耐えるくらいの強度は今も維持しているようだ。目につくものといえば、何かの瓶に、壁にある本棚、カウンターの上に置かれている手野新聞と中身が空っぽのマグカップだ。新聞の日付は今日付けになっているから、毎日とっているものらしい。
「緒方さんですね。今呼んできます」
ひょいと椅子から降りると、カウンターの一部の板を外し、そのまま中へと入る。それから緒方らからみて右側へと回るとドアを開けるような動作をした。
「緒方さんが見えましたよ、どうされますか」
居留守をここで使うような根性は、この情報屋にはある。ただ今回は素直に出て来てくれた。
「やあみなさん、こんにちは。今日はいい天気ですね」
にこにことしている、少し痩せていて、170cmあるかどうかというぐらいの身長を持つ20歳そこそこの男性が、緒方らに手を振りながらやってきた。それからよいしょとカウンターにあった椅子に座ると、彼女にコップを渡す。
「彼女は?」
放出が彼に聞くと、笑いながらもアルバイトだと語った。




