第129話
しかし緒方は北山を追いかけることができなかった。
なぜならば、北山が最後に残した雲がいよいよ雷を四方へと放つための準備を整えていたからである。
「“稲光よ、我の周りを回り、道を開き給え”。」
パンパンと柏手を打ち、緒方は祈りをささげる。
同時に、魔術で周辺の水をのけさせて、壁のようにした。
そこに雷を落とし、自身への被害を無くさせたようだ。
音は激しい、光も、まるで壊れかけた蛍光灯のように点滅しっぱなしだ。
暴風雨の真っただ中にいる状態で緒方は空中を歩く。
地面に足を杖kるとエネルギーを吸われて、今している魔術を維持できない可能性があるためだ。
「平塚、無事か。今からここから脱出するがついてこれそうか」
「……ああ、おかげさまでな」
いつから起きているのかはわからないが、平塚は緒方にだけははっきりと聞こえるようにして答えた。
「じゃあ来てくれ。いつまでもこれを発動させているわけにはいかん」
「わかった」
一瞬膝に力を入れたかのように見え、それから平塚は宙に浮かんでいた。
浮かんでからは魔法陣の影響から脱したようで、一瞬で消える。
「こっちだ」
怪談の上から声が聞こえる。
どうやらそこに瞬間移動してみせたようだ。
ただ椅子から逃げれたわけではないので、縛られたままの状態なのは変わらない。
それでもお多賀は魔術を連続しておこし続けて、無事に階段の一段目に到達した。




