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第128話
膝くらいまで水がたまったころ、いよいよだな、と北山がつぶやく。
「“水よ、風よ、光を集め、あいつに雷を。”それじゃあね警吏官さん」
水は一瞬にして巻き上がり、それはまるで雲のように霧を作り出した。
雲は風の動きによって一箇所へと集められ、少しずつではあるが雷のような光も見える。
「どうなるか分かってるだろ、逃げられんぞ」
「はっ、今まで私は逃げ続けれたんだ。これからも変わりなく逃げるだけさ」
すでに魔術は完成している。
北山は悪態をつきつつ、緒方とは反対の方向、つまり地上への階段へと向かって走り出した。
「“地の神よ、北山の動きを止めろ。波打たせ、地面よ裂けろ”」
緒方は続け様に幾つもの魔術を繰り出す。
しかし、小型精霊という小ささも相まって、ピョンピョンと跳ねて避けられていく。
「精霊はね、魔術粒子に流れがあることを、直感的に理解できるんだよ」
階段から姿が消える直前、北山はそんなことを言ったような気がした。




