第12話
「ともかく、その紹介屋に会うことになる」
所長がとにもかくにも行って来いという、有無を言わせない姿勢で命令する。警視総監も会いたくはない人物らしく、4人で行くことを伝えた。ここで警視総監は別の仕事があるということで退室し、それから所長が続ける。
「紹介屋は何か土産の一つでも持っていくのが良いだろう。何がいいかは君らに任せる。それと、くれぐれも彼といざこざを起こすなよ。しりぬぐいするのはごめんだからな」
「分かっていますよ所長。自分も何年も付き合ってるやつですから……」
半分以上嫌だという気持ちが出てきているのが分かるが、それでも情報屋というのは貴重だ。それもそこまで精通している人物というのは、そうそういるものではない。そうなると相手の機嫌を損ねて情報をもらえなくなるということのほうが、後々苦労が増すのは分かる。
「では解散。また報告をしてくれ」
「はい所長、失礼します」
上司ということで敬礼をし、緒方を先導として所長室から退室する。少し背伸びをする根来の横を歩く放出が、緒方に聞いた。
「で、お土産ってどんなのを持っていくの。地方銘菓?」
「そうだな、焼き菓子詰め合わせとかなら喜ぶかもな。だが、もう候補は決まっているんだ。やつのところに行く前にその店に寄るぞ」
歩きつつ、スマホを取り出す。そしてエレベーターを待つ間にサクッと調べていた。
「一つ、質問しても」
「ああ、なんだ」
根来が緒方に聞いた。
「情報屋て、普通は裏切り者の扱いを受けると思うんだけど、どうして殺されたりしないの」
「彼は特別でな、金を積めば万人に平等に情報や人を紹介してくれる。その人の資産状況や交友関係なんかも知り尽くしている可能性も高い。つまりは、彼が死ねば損をする人が必ず自分の身内にも一人はいるっていうことだ。特に情報をもらいたいと思うような警察や警吏、暴力団の組織にはな」
「自分が死んだら情報が手に入らなくなるから自分を殺さないてことですか。どんな情報網ですか、それ」
「さあな。やつの全貌を知るのはやつ自身以外いない。CIAやKGB、手野武装警備もかなわないほどの情報を持っているていう噂だからな。殺そうとも思いはしないさ」
そんな人に会いに行くと考えると、少し身震いをしてくる根来と放出だった。




