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J-250
「だ、誰なの?何故そこにいるの?」
低く、唸るように言葉が出た。
「お前は、施設から逃げてきたのか?」
どうやら私の質問には答えてもらえないらしい。
男の風貌を確認した。入り口から差し込む光でうっすらしか見えないが、歳は同じくらいじゃないだろうか。黒い髪が、肩まである。なんだか痩せていた。
「そうよ。私を捕まえるつもり?」
「名前は?」
会話が成立しない。これでは私が尋問されてるようだ。
「・・・K-315」
「K-315か。なかなかだな」
言っている意味がわからなかった。
「俺の名前はJ-250だ。お前を捕まえる気は無い。俺も施設から逃げてきたんだ。ここにいるのは施設の調査のためだ」
今までの質問の返答をいっぺんにいただいた。情報量に困惑して、次の質問がまとまらない。
「ついてこい」
男は踵を返して歩き出してしまった。
ー信じていいのだろうか。
遠ざかる背中は待ってはくれない。この背中にすがらなくてはいけないと、何故か私の中で警報が鳴っていた。
考える暇も与えてくれないか。
私は考えるのをやめ、歩き出した。