魔導跳躍2 ラウネーとの冒険旅行
少年トリムはクジェフとラウネーの家とも言える増精具店に住む。
一介の高校1年生だった安納鶏六もといトリム。
自作団扇が異世界に引き込まれて、追うように異世界へと潜って現世とおさらばした。が、大変な事に仕事が捗らない店の協力者として労働契約されたという。
店を構える《増精具店》店主、クジェフ・ポルオム。ポルオム家の次男坊の家庭は次男夫婦は魔導怪獣に殺害され、次男坊の娘をクジェフは引き取った。
その娘がラウネーという。トリムとなんらか年端変わらない年齢で、今が年頃だという。
陋屋のベット設置の部屋に現れた少年トリム。この陋屋が危険区だと言われ、クジェフとラウネーの二人は、彼の体を起こし、取り敢えず、店まで送った。
「ここが《増精具店》?」
「そうだ。魔力の塊、溜め込んだ精を道具に備えると、道具の使い手の持つ精が上がり共に魔力レベルがアップするのだ。改めて言う。トリムよ、ここでひと仕事お願い頼もうぞ」
「あぁ、はははは……」
冗談キツいよ、店主のオッサン。と言いたい気持ちが余り抑えきれずに苦笑するしかなかったトリム。
店内は攻防の種類がわんさかあるが売れ行きはほぼない。
クジェフ曰く、クジェフ自身の精を込めて生成させた道具は精不足だの野次飛ばす消費者が続出。精がないだのとケチつけて買わずに出てしまう一方。だから、閉店するしかない。
という貧乏店舗だったが、トリムの出現により、良品が増えそうな感じがして止まないのだ。
「なんか芸を入れ込んでもらいたい。呼び込みの手段は問わん。頼もうぞトリム」
「マジで?」
「ウム、よろしく頼む」
「芸って何すんのさ」
「トリム、大丈夫! トリムは何か秘めた物を感じるの。あなたなら出来るわ」
このお嬢さんのためなら何だって出来そう。そんな事ほざいてると悪い事起きそうで怖い。
「とにかく、この団扇芸で呼び込みできればなぁ」
都会風の商店通り。そこの空いてる人通りのないスペースで、トリムは団扇芸をやってみせようとひと仰ぎ入れてみた。
なんてあろうか、一つ仰いだはずが風速10キロ超えた風の勢いがした。仰いだ先の向こう側が何もない空間で良かった。障害物があれば倒壊になりかねない。それほどの威力はあった。
「あんだぁ、あのペラペラな真っ平らな得体の知れんモンは? 突風を起こしやったぞ〜‼」
都会をトボトボ征くオジサンはぶつくさ言って通り過ぎた。
オジサンの声に釣られたか、都会の通行人たちは、増精具店へと駆け寄り、興味を示した。
しかし、団扇は一つのみ。増量求めても無駄だった。
だが、ここに出現したトリムには増量魔術が備わっており、《チートビジョン》に従い、団扇を大量生産させたという。
するとなんであろうことか、団扇は風の魔法具として高値で売れたという。
クジェフの睨んだ通り、トリムは幸運を呼ぶ神様だと言っても過言ではなかった。