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幻世は団扇が武器になる  作者: 眞沙梦
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魔導跳躍1 仮染め労働契約

とにかく主人公は名前の読みが気に入ってない拘りの激しいタイプ。コンプレックスはこの現世では一つのストレスになる。少年の名前に関する葛藤から始まる物語です。

 県立報千歌(けんりつほうせんか)高校。そこでは、送風機工作部がある。

 団扇や手作り扇風機とかを開発する部活だ。扇風機といっても市販のような電気で動かすのでなく全てからくり仕掛けでアナログ稼働にさせるのだ。

 入部当初、抵抗あってダメ出しと愚痴っていた安納(あんのう)鶏六(とりろく)、16歳は高校1年生だ。

 だが、開発の仕組み等見せられたら、のめり込んで、今ではアシスタントまで務めたという。

 トリロクの読みが苦手でニックネームをトリムで読ませるのが男子高校生の性分だった。

 まぁ、六はムとも読めるからそっちがサマになる。親が名付けた読みはいつも悩まされていた。

 アナログ装置で稼働する扇風機以外ならば、鶏六は完全にマスターした。扇子と団扇は、材料さえあれば一時間経たずに仕上げられるようになれた。

 こんな送風機工作部が存在していたおかげで、彼は原始人のようなアナログテクニシャンになれた気がしていた。


 全科目の試験日がようやく終えた涼しい秋の時期のこと。

 鶏六は一教科のみ赤点の解答プリントを二つ折りに、浮かない顔して帰宅した。

 苦手な化学が克服出来ないのだ。

 帰宅して猛復習しだした。

 全科標準値点を突破するよう挑む真面目さは誰にも負けはしない。


 とは言うもの、猛復習の『も』の字なんて脳内から吐き出してしまうもの。不得意分野なんてそう言う気分にさらされる。

 ベットに横たわるもスマホをイジって、友達とトレード(LINEに似たSNS)でトレードトークしていた。

 だが、化学の赤点の話題しか思い浮かばない。

 赤点なんて教えたら恥だ。鶏六はスマホイジりをやめて放り出した。


『あー、ウザい。何もかもイヤだ。何か人に伝えて発散させたい‼』


 今までなかったモノローグだ。

 何故に今頃こんな事を思ったんだと不思議がった。

 そんな時、ベット表面から魔方円を思わす印が浮かび上がってきた。


「ウワッ。こりゃ、なんだ‼ 魔方円? 魔法や魔術とかいうアレかよ?」


 言いながらベットから煩く降りた。拍子にベットが揺れて近場の創作の団扇が謎の円の中へと落下した。


「あっ、僕の団扇が⁉」


 すると、団扇は円が放つ赤い光の線に吸引された。


「そんな馬鹿な⁉ 仕方ない。僕もあの謎の円に飛び込むぞ‼ ……せぇの‼」


 鶏六は円の線内部により吸引させられ、ベット表面の向こう側の空間へとゲートをくぐりだしたのだった。



 そこは、中世文学史にでてくる欧米文化とは違う。19世紀末頃の欧米的な近代化の雰囲気はある世界観はあるかも知れない。

 いわゆるタイムスリップなのか、鶏六は、そこへ団扇と共に着地したらしかった。


「これ……大昔のアメリカかヨーロッパか……なのか?」


 ポカ〜ンと変顔らしい開口のまま、鶏六は呆けていた。


「アレ? お客様? こんな危険区で何してるの? 観光するなら都市部行ったら? ココは立ち入り厳しいから、早く出ないと目付けられるよ」

「(日本語? 一体どうなって……)ああ、判った。今出るよ」

「変わってるの持ってるね。 それ、何? もしかして亜成層圏の遺産?」

「亜成層圏? 成層圏って一つの層だろう?」

「別世界のゲートをくぐれば、そこからは上空の層から急降下するんだよ」

「じゃ、僕は異世界に出たのか? そんな事が……」


 鶏六はどうやら異世界へ出るゲートをくぐったに違いなかった。

 その寝室らしき部屋にもう一人(・・)入ってきた。


「少年、お主はもしや亜成層圏ゲイターなのか?」

「もう、クジェフおじさん、突発的にそんな事聞かないの!」


 ゲイター? 鶏六は、ゲートの関連語と英語の確認をしてみた。


「つまり僕はゲートから来た者でゲイターと呼ばれる存在だと?」

「おおっ! 少年、飲み込みが早いの。亜成層圏かどうか、まだ判らないのに」


 少年は事の経緯をまとめて述べた。二人の住民は、驚愕したのか開口が塞がらなかった。


「亜成層圏の外はこのウィムセイハートの地球と地続きしていた訳か? ワシは、ウィムセイハート調査武装官のクジェフという者だが、別の地球があるとは驚いたな。ここにいる娘は姪っ子のラウネー。ウム。お主、ワシらの仮染めの家族として住み着いてくれまいか?」

「僕がこちらの家族に? いや、そこまでご厄介になれませんよ」

「仮染めだよ。大丈夫よ。あたしたちは力不足なの。男手ないとやれない事多くて、それで」

「僕は協力者の資格なんて」

「責任重大じゃないのさ。お主、この家は男手が少しもなけりゃ収入がないも同然なのさ。収入が落ち着くまでの間、頼めないだろうか」


 ここまでお願いされた少年は、逃げ場を失った感覚がしてきて、正直戸惑うしかなかった。


「仕事の内容にもよりますけども」

「亜成層圏の向こうの地球ならば万能の魔法が備わってると推察する。すなわち、お主の持つ魔力でひと仕事働いて欲しい」

「質問……僕は魔法とか魔力すら持ってません。だからご協力に添えることは無駄です」

「なんですとーー‼」


 クジェフは家の床に額を数回もぶつけて土下座らしい感じの謝罪を繰り返したという。


「ああ、言いそびれました。僕はあんのう……じゃなくて、トリムって言うんだ。よろしく」

「じゃ、トリムよろしくね。魔力なくても何か働いてね」


 ラウネーの両手に掴まれてたじたじするしかなかった鶏六……もといトリムだった。

 仮染めの家族の時間は、これより始まったのである。

まぁ結局は、トリロクの読み方は異世界ではニックネームのトリムで通用させてコンプレックスから開放されたそうでなにより。これからの展開が責任大きいぞ、トリム。

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