1、初めての
初めまして、私は東条百合。
実家はそこそこ裕福。それ故幼い頃から花嫁修業やらなんやらをさせられてた。今は社会に出て一人暮らしをしているおかげでとても楽。自分の趣味のために有給を取って贅沢に休むなど結構自由な生活をしている。
今日も溜まっていた有給を使って今日発売されたVRMMOゲーム、「世界樹の子」をやるつもりだ。
ストーリーは創造神が世界樹を作るところから始まる。
世界樹は地を作り、
山を作り、
海を作り、
川を作り、
気候を作り、
季節を作り、
生き物を作った。
世界樹はそれぞれの生き物に役目と力を授けた。
人間には誰にも負けない叡智と種族同士の橋渡しとしての役目を授けた。
獣人には誰にも負けない物理の力とどの種族でも困難が降りかかれば助ける役目を授けた。
森の民には自然の声が聞こえる耳と自然を守る役目を授けた。
魔族には誰にも負けない魔法の力と来たるべき時のためいち早く立ち向かう役目を授けた。
そして一方でどの種族にもなり得なかった出来損ない…魔物が世界にバラまかれた。
それぞれの種族は国を作り、魔物に対抗する手段を得て魔物と戦った。
私たちプレイヤーはその数千年後の世界で好きなように暮らす少年少女、という設定だ。
生産職をするのもよし、前線で活躍するのもよし、のほほんと攻略するのもよし、なんでもオーケーな世界だ。わたしはその自由度に憧れてゲームを予約して今日届いた。
早速やってみるかとVRヘッドフォンをかぶるとすぐに意識が消えて行きプツンと途切れる。
目を覚ますと白い世界にいた。おそらくゲーム内なのだろう。キョロキョロと周りを見回していると目の前にメッセージウィンドウが現れた。
「名前を入力してください」と書いてある。自分は迷いなく「結梨」と入れた。ちなみに読み方は「ゆうり」だ。
次に目の前に鏡が現れた。そこにはリアルでのわたしが写っている。鏡の上の方には「アバター設定」となっている。今回は綺麗なお嬢様プレイをするつもりなので綺麗で、どこか儚げな雰囲気が漂うアバターにしたい。
と言ってもこれまた大体決めていたのでサクサク作って行く。
種族は人間。髪も青、目も青、服も青ベースにした。胸は一つだけサイズを盛る。元々がDなので今はEサイズだ。
服はレース付きの紐なしのブラの上にスケスケの半袖を着る。袖はランタンスリーブ。今思ったけれどこれ谷間…いや目立たないはずだ、きっと。
ボトムスはハイウエストの青のロングフレアスカート。回るとふわぁってなるやつ。丈は膝下3センチ。
シューズは黒タイツにショートブーツ。4センチヒール付き。
ファンタジーな世界観だからファンタジーな服しかないのかと思えば結構今風のやつもあり運営すげーと思った。
次に職業だがランダムに4つ職業が出てくるらしい。メインとサブで二つの職業を選べるらしい。わたしに出てきた4つの職業は上から
暗殺者
調教師
魔術師
剣士
下2つはともかく上2つはレアだったはず。主に暗殺者。これはβ版でも10人ぐらいしかいなかったはずだ。初期スキルに隠密、投擲、ランダムな魔法1つが付いてきたはず。他は覚えていないが。
調教師はその名の通り魔物を調教して従える職業だ。類似する職業で召喚士というものもある。
わたしは迷った末メイン職業に暗殺者を選んだ。もふもふを引き連れるというのもとても…とても魅力的だったのだがやはりβ版10人の魅力には勝てなかった…もちのろんサブは調教師だ。
武器はモーニングスターを選んだ。鞭スキルと槌スキルが必要な武器だがその代わりに攻撃力がたかい。
何より形状が好きなので衝動で選んでしまったよね。衝動には勝てない。
「これでいいですか?」と聞いてくるメッセージウィンドウに「はい」と返し、これから体験することになる未知のものに胸をドキドキさせながら光に飲み込まれていく。