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不思議な蔵

少し不思議でミステリアスなショートストーリーです。

第一回目はお宝が出現する蔵の話です。

 つい先日おれはすばらしいものを手に入れた。

 親父が死んで遺産が転がり込んだ。

 家だ。

 アパート住まいの俺には父からの素晴らしい贈り物となった。

 家自体は築100年以上となる古民家でさほど大きくない、4畳半3部屋、8畳間二部屋、風呂・台所・トイレ付き・庭・蔵・・・結構広いじゃないか。一人で住むにはちょっと広いかも。

 まあ、金を稼いでリフォームして古民家カフェなんかいいかも知れない。


 リフォームする金を持ってるかって?

 今俺は古物商でアルバイトをしている。

 当然アルバイトの給料だけでは生活していくのがやっとだ。そんなんでリフォームできるか?

 当然無理だよな。

 そこで、この家だ。いや、家に着いていた蔵だ。

 蔵にお宝が眠っていたのかって。

 半分当りだ。

 半分というのは、確かにお宝とも言うべきものがあった。ただあるだけならそれを売っていっても、全部売ってしまえば古民  家カフェを開いた後うまくいかなかったらおしまいだ。


 じゃあどういうことかというと、お宝が増えるのだ。

 一つ売ってしばらく経つとまるで補充するかのように増えているのだ。

 一番最初は、ビンテージもののジーンズがあった。

 普通に売れば百数十万ほどするものだ。

 もちろんアルバイト先の店長に鑑定してもらったものだ。

 家を相続したばっかりで金に困って、蔵で見つけたジーンズを鑑定してもらったものだ。

 もちろん委託販売ということで店に手数料を払って売ってもらった。

 アルバイト先に売ろうと思ったが、店長が「買い取りだと売値の一割位しか出せないが委託販売だと売値の一割の手数料で販売できる」と言ったから委託販売にしてもらった。


 実際には八十万ほどで売れた。さすがに百数十万は現実的ではないと、店長と相談して決めた。

 そしたら店頭に出して三日で売れた。これを百万以上で出してたら数ヶ月かかったかも知れないと店長は言っていた。

 まあ委託販売の場合、半年間売れなかったら引き上げるというのがここのルールだ。

 店長は蔵から出たのなら、まだいいのがあるかも知れないから探して持ってこいと言っていた。

 いっぺんに出してしまうと売れにくいから少しずつ持ってこいとも言っていた。だから少しずつ探し出して持っていこうと考えて一週間後蔵に入ると・・・驚いたことに前とは違う種類のビンテージジーンズが前のジーンズと同じ所にあった。

 早速また持っていった。

 前のほどの値段はつかなかったが、そこそこの値段で売れた。

 何度か他の場所にあった他のものを持っていったが売り物にならないと言われた。

 どうやらこの場所に現れるものだけが売れるようだ。

 

 何度かそう言うことがあった後、どうやって現れているのかどうしても知りたくなった。誰だってそうだろう、知りたくなるだろう。

 というわけでビデオカメラを仕掛けることにした。

 さてどこに仕掛けるか?いつも現れる場所を直接見えるようにおくと、あまりにも撮ってるぞって感じだろう。

 その付近をよく見ていると、斜め前に大きな姿見があった。

 そうだこも鏡に映るように設置すればいいだろう。都合のいいようにちょうど設置したい場所に棚がある。ここでいいだろう。何となく都合が良すぎる気もするがそんなこと小さなことだ。とにかくここに設置しよう。


 そして新しいお宝を売って、二週間ほどしてからビデオに意外なものが映っていた。

 なんと鏡の中から帽子を目深にかぶった男らしい姿が現れた。顔は分からない。

 そしていつもの場所にお宝らしいものを置いてまた鏡に中へ戻っていくのが撮れていた。

 早速蔵の中へ行って鏡の前に立ってみた。

 俺が映っている。普通の鏡だ。

 辺を調べたが特に何もなかった。扉になっているのかとも思ったが、そんなことはなく普通の姿見だ。

 どうなっているんだろうか?

 もしかしたらこの鏡が異世界につながっていて、そこに色々なお宝が眠っているのでは。

 異世界ものラノベの読み過ぎか?

 いや、その可能性は大きいだろう。

 さてどうしようかな?


 そしてまたお宝を売って二週間すぎた。

 俺は鏡の横に大きな荷物を置きその陰に隠れていた。

 何をするかって。

 当然あの男を捕まえてこの秘密を聞き出すのだ。そしていつでもお宝を手に入れるようにするのだ。

 ちまちまお宝を売るより一発大きなお宝を売ってまとまった現金が欲しいのだ。

 それに最近は数万程度のものしかはいってこないのだ。

 ん?何か音がした。鏡の前の空間が一瞬だけ歪んだような気がする。

 やっと来た。

 あの男だ!

 男は小脇に抱えていた荷物をいつもの棚にゆっくりと置いた。

 俺は静かに近づき、その男の後ろに立った。

 男は気付いていないのかゆっくり振り向いた。

 きっとびっくりするだろう、俺はそう思っていた。

 が、びっくりしたのは俺の方だった。

 男の手にはナイフが握られていた。

 男はゆっくりとナイフを振り上げると俺の頭めがけて振り下ろしてきた。

 な、何だこれは、どういうことだ?

 とにかく俺は体をひねり男の腕をとって背負い投げの要領で投げ飛ばした。

 え、柔道やっていたのかって。いやいや偶然だ。

 男は床にうつぶせになっていた。

 その男の横に赤い液体が見えている。

 まさか、そう思い慌てて男の体を起こした。

 男の腹には深々とナイフが刺さっていた。

 いや、あの体勢からどうやったらナイフが刺さるんだ。ナイフを持った手を持って投げ飛ばしたから腹に刺さるなんて。

 何も考えずそのナイフを抜いた。

 その瞬間男の顔が笑った。そして男の頭から帽子が落ち、男の顔がはっきり見えた。


 俺だ!


 男の顔は俺だった。

 男の唇が動いている。

 思わず耳を近づけた。

 男のはなしに驚き、体を起こした。

 周りの風景は一変していた。目の前に姿見はある。うちの蔵がその中に映っている。

 そしてその姿見の両側に同じように姿見が並んでいる。

 その中に映っているのはそれぞれ全く違う風景だ。

 同じような蔵らしきものもある。

 何処かの西洋のお城の中のような風景もある。

 うちの蔵が移っている中には、俺が横たわっている赤い液体の中に。

 姿見に俺の姿は映っていない。俺の足下にあった死体もない。

 そして俺はナイフを手にし、俺のいる場所には鏡とそれと平行に並ぶお宝が置かれた棚があるだけだ。

 

 男が語った事によると。俺はこれからこの棚にあるお宝を姿見の向こうの世界へ運ばなければならないらしい。

 なぜそうしなければならないかは分からない。でもそれがこれからの俺の仕事らしい。

 この世界と姿見の向こうの世界を行き来するためにはこのナイフが必要だそうだ。

 一応この仕事を辞めることも出来るらしい。ただそのためにはあの男がやったように代わりのものにこのナイフを渡さなければならないらしい。しかもその時自分の命を差し出さなければならないらしい。


 ではどうするか?元の世界に帰りたいかって。

 とんでもない、ここには色々なお宝と呼ばれるものが並んでいる。これを眺めているだけで何となく幸せな気分になる。しかも姿見の向こうの世界へ運んだ後、新しいものが追加されるのだ。

 しばらくはここで過ごすのもいいな。どうせもとの世界に戻るためには死ななくてはならないのだから。それに生きて戻ったとしても人との関わりがめんどくさい。しばらくここで過ごして飽きたらその時考えるさ。多分そんなときは来ないと思うが。

この話は同僚のビンテージジーンズを持っていたという話から大風呂敷を広げて作りました。

ビンテージジーンズ以外は全くの創作です。

今後も思いついたらアップしていこうと思っています。

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