6話 気付いた想い(カケル視点)
タクミ「カケル!どうだった?」
俺はエルの捜索をタクミと一緒に行っていた。
「だめだ、周辺の車のナンバーは確認したけど、お前が見た車は無かった。」
タクミ「悪い……、お前に連絡した後、あの人と一緒に帰ろうと思ったんだが、間に合わなかった……。」
相手は車だ。中にさえ入れれば、あとは一瞬で走り去ってしまう。
「しょうがないよ、それより早く探そう。」
あてもなく探すよりも、一度状況を整理しようと思い、俺は校長室で考えることにした。
校長「警察に捜索してもらおう。」
唐突すぎるその言葉に、少し躊躇う。
「今まで誰の命がかかっていようとも警察に相談せずに無にしてきたあんたが、何でそんなに焦ってんだよ。」
明らかにおかしい。どんなときもここまで乱すことは無かった。
校長「殺されては意味がない!安心しろ、ここまで一刻を争う状況になってしまったのは私の責任だ。君を退学させるつもりはない。」
エルの命が危ないときにそんなものはどうでもいい。
「あんたが警察に頼もうがどうでもいい。俺は必ずエルを見つける。」
バレようがなんだろうが、俺はエルを助けたい。
あてもなく走る。無駄だと分かってはいるが、それ以外にすることがない。周りの車を確認しながら、もう20分近く走り続けたところで、タクミからの電話でスマホが鳴る。
タクミ「見つけた。住所を言うから、調べて早く来い!」
考えることが多くて整理ができない。エルが見つかったことに安堵するが同時にまだ状況は分からない。
それに加え、屋上でエルと話していたときから、どう考えてもタクミの行動はおかしい。
どうしてエルが追われていること、エルが見つかったことを真っ先に俺に教えるのだろう。
どうやって、エルを見つけたのだろう。
考えても仕方がない。タクミのことは後に回す。
「タクミ!」
言われた通りに目的地へ向かうと、前方にタクミが見える。そこは、山奥の小さな小屋だった。
タクミ「悪い、教えるための住所がここしかなくて……、すぐそこでまだ捕まってる。犯人はまだ見えない。」
放置してるのか?餓死が狙い?それともエルを餌に誰かをおびき寄せているのか?
「とりあえず助けられるなら構わない。すぐに行こう。」
考えても分からないことは考えない。ここでエルの様子を伺っていても、時間が経てば殺されてしまうかもしれない。
「エル!」
エルのもとへ走る。エルは手足を拘束されて、口元にはガムテープが貼られている。俺が手足のガムテープを剥がしている間、エルは何かを訴えかけていたが、何も聞こえない。そして口元のガムテープを剥がしたとき、突然叫びだす。
エル「カケルさん!後ろ!」
その声で後ろを振り向く。予想はしていた。
けれど信じたかった。彼はそんなことをする人ではないと信じていたかった。
タクミ「やっぱお前はいいやつだな、カケル。」
そう言うタクミの手には、銃が握られている。
「何してんだよタクミ。そんなのどこで……。」
タクミ「今どきこんなの裏サイトでいくらでも手に入るよ。気付いてたんだろ、俺のこと。」
確かに気付いていた。けれど自分のなかで完結することと、現実を見ることでは訳が違う。
「エルを殺さず俺を呼んだってことは、俺を殺したいんだろ。何でわざわざエルを巻き込んだ。」
タクミ「チホがお前のことを好きだからだよ。」
どういう……?
タクミ「お前はチホの気持ちに向き合ったことがない。そのくせそいつに惹かれ始めている。単純に俺はカケルを恨んでいるんだ。だから俺はお前をそいつの前で殺すことにした。」
それだけで十分分かった。タクミはチホのことが好きだったのか。だからチホに好かれていながらその気持ちに向き合わず、他の人に惹かれている俺が憎かった。
けれど、なぜあのタイミングで連絡してきたんだ?恨みだけでここまで完璧に事を運べるか?
「校長に送られたあのパズル……。」
タクミ「頭の回転だけはさすがだな。あれは俺が校長に送った。エルを対象とした殺人予告として。」
全部繋がった。校長と俺が繋がっていることを知っているタクミは、その関係を利用して俺をここまで自然におびき寄せたのか……。
近くでパトカーのサイレンが聞こえる。
タクミ「予想通り、あの校長ならこの状況であれば警察を使うと思ったよ。まぁ残念ながら俺は警察に捕まろうが関係ない。お前を殺せればそれでいい。」
これは俺が引き寄せた事件だ。誰がトリガーと言われれば、間違えなく俺だ。だから……、
「この罪を償った後で、お前が報われることを心から願うよ。」
瞬間、銃声が鳴り響く。
腹部から血を流し、脇腹の奥の銃弾の熱さと痛みを感じながら最後に見た光景は、警察に確保されるタクミの姿と泣き叫ぶエルの顔だった……。
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