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5話 過去(トオル視点)

2年前、俺のクラスメイトは全員が同時に自殺した。

俺はあのときの事を鮮明に覚えている。影に飲まれ、もがき苦しむ人も、人のために自分の命をかけた人も、俺は全員の死を確かに感じた。けれど、現実では彼ら彼女らは心停止で亡くなっており、俺が見たものとは違い、全員が同時に亡くなった。あのときは午前2時で時が止まっていると理解していたが、現実で生活すればするほど、その非現実的なものはすべて夢に思えてくる。

3年に進級してすぐに、俺はある女の子に声をかけられる。


エル「トオルさんですか?」


知り合いでもない人に声をかけられるのは珍しく、個人性ということもあり少し驚く。


「そうだけど、どうしたの?」


エル「私、レンの妹でエルといいます。兄がいつもお世話になっておりました。」


レンという名前に少し反応する。俺が知っているレンは1人だけだ。


エル「突然で悪いのですが、トオルさんは兄が自殺した理由をご存知ですか?」


この娘はたぶん納得のいく答えを探しているのだろう。当たり前だ。自殺と判断されたにしては、心停止はおかしすぎる。そう考えると俺が見たものは、きっと現実なんだろう。

それなら家族であるこの娘に話すのは酷だ。


「ごめん……、分からないんだ……。」


同時に俺は無意識に逃げていたんだと思う。レンは俺を助けて死んだ。この娘にそれを話すことが怖かったのかもしれない。



その日、提出物の提出のために職員室に行くと、校長室から出てくるカケル君を見る。思えば、カケル君を校長室で見ることは多い。


「カケル君。」


俺は話がしたいと思い、カケル君を呼び止める。


カケル「トオルさん?」


「屋上に行こうか。」


屋上に出ると、秋になり少し冷たい風が、これから俺が話そうとしていることを表現しているように思える。


カケル「話って何ですか?」


「カケル君、君は校長に何を頼まれたの?」


少し驚いたような反応をしている。おそらくはバレているとでも思ったのだろう。


「校長は今年の春まで俺にみんなの自殺の理由を聞きにくることが多かった。おそらくは学校存続の裏付けをしたかったんだろう。けど、俺はそれを言うことはできない。そして春になり俺へのアプローチは急に無くなった。代わりにカケル君が現れた。」


カケル君はたぶん、校長に口止めをされている。何かを吊るして人を働かせる。あの人はそういう人だ。

それでも、エルちゃんやカケル君のことを考えると、カケル君の答え次第では、俺は校長にあのとき起きたことを話さなければならない。


カケル「ごめんなさい……。俺は、それをトオルさんにだけは言ったらいけない気がする。」


やっぱり、カケル君はすべてを分かっているんだろう。俺が自殺の理由になりえる体験をしていることも、それをエルちゃんに隠していることも。だから自分が頼まれていることを俺に話せば、エルちゃんがどう思うかも考えて、俺には話さないんだろう。

それならいい……。

ちゃんとそうやって人を大切にできるなら……。

君ならきっと、大切な人を()()()()()()()


「2年前、クラスメイトじゃない。けど、確かに俺には愛してた人がいたんだ。その人を俺はみんなの自殺を境に忘れてしまった……。何よりも大切だと思っていたのに、今はもう思い出せないんだ……。」


君がこれから、どんな痛みを知るのか、どんな苦しみを知るのかは分からない。でも……、だけど、


「君は大切な人を、絶対に忘れるな。」


俺が感じている悲しみだけは、どうか感じることなく生きてくれ……。


(カケル視点)


トオルさんと話をした翌日、俺は珍しくスマホではなく放送で校長に呼び出される。


「どうしたんですか?急に……。」


中に入ると、校長は少し焦っている。この人がここまで素の感情を剥き出しにするのは初めてだ。


校長「君に頼みがある。君の学年のエルさんが今日殺される予定だ。何としても阻止しろ!何をしても構わん!無にしなくてもいい、殺させなければ警察を使ってもいい!」


今まで、殺人予告なんていくつも見てきた。けれどこの時の校長はなぜかエルが殺されることに恐怖を感じているように見える。

まるで今までが、()()()()()()()()()()()……。

そのとき、俺のスマホにメッセージが送られる。それは、タクミからだった。


[この間お前と屋上で一緒にいた女の子の後ろに、ゆっくりと走る軽自動車がいるんだが、知ってるか?]


純粋に恐怖を感じた。咄嗟に走り出した俺は、強引に下校中の生徒をかき分け、エルのもとへ向かう。


チホ「カケル?どしたの?そんな急いで。」


俺はチホを無視して走る。そのときに気付いてしまった。俺は今まで、チホの好意を避けてきた。そして俺は知らない間に、エルに魅力を感じていることに。

最悪だ。俺は自分がここまで最悪だとは思わなかった。恋愛のことを考えるのが失礼と思いチホの気持ちに向き合わなかったくせに、まだ会って間もないエルに俺は惹かれ始めている。

大切な人のために涙を流せるエルに……。

急いで曲がり角を曲がったとき、目の前にはエルのカバンが落ちていた……。


最後まで見ていただき、ありがとうございます!

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