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4話 交錯する思い(カケル視点)

俺は頭の回転が早い。前にも言ったが、それは頭がいいということではなく、単純に読解、理解の能力が早いということだ。これまで解決した依頼は、全て感情を読み取り、予想を立てたものが正解だった。


「俺は捜査はしますけど、推理はしませんよ。」


校長は難しい顔をして、俺に懇願する。


校長「送られてきたこの手紙が殺人予告だったらどうするんだい?」


前言撤回しよう。懇願ではなく、交渉だ。

昨日、校長宛てに1通の手紙が届いた。そこにはパズル形式の問題が用意されていて、校長はそれに苦しんでいる様子を()()()()()

けどまぁ、俺はだいたいの感情は読める。


「いつまでそんな化けの皮を被っているんですか?俺よりあんたの方が推理向けだろ。」


そもそも俺に対するこの依頼は、頭脳を必要としない。校長は最初から、俺のような退学を武器にして使える駒が欲しいだけだろう。


「俺はただの実行班だろ。」


だからチホの一件で怒った。自慢の頭の回転で、実行班である俺が事件を《無》にできなかったことを。


校長「君は本当に嫌なくらい人の感情が分かってしまうんだね。」


「失礼しました。」


俺は校長が嫌いだ。主な理由は()()()感情が読めないからだ。俺が読める校長の感情なんて、本当の感情を隠すためのフェイクにすぎない。


エル「今日も推薦の交渉、お疲れ様です。カケルさん。」


俺はこいつも嫌いだ。こいつがいつも使う完璧な笑顔のせいで、エルの中の感情がすべて統一されているからだ。そろそろすべて整理しよう……。


「今日もストーカーお疲れ様。エル、とりあえず話がある。」


この前トオルさんと来たときも思ったが、真剣な話をするときに屋上は最適だ。誰もいないし、声が反響して誰かに聞かれる恐れが最も低い。


「お前のお兄さん、2年前に同時に自殺した1人なんだろ?」


エル「どこでその話を聞かれたのですか?」


笑顔が少し崩れて、ようやく少し感情が見える。

俺は、トオルさんのことは伏せた方がいいと思い、繕った言い訳に真実味を帯びさせて答える。


「こないだお前が去る前に、兄の自殺理由とか言ってたろ。だからそうだと思ったんだよ。」


正直、兄が自殺とか言われただけでは可能性しかない。全く別の関係のない高校の話かもしれないし、トオルさんがエルのお兄さんとクラスメイトだったという情報も俺は知らないことになっている。


エル「そうですか……。」


エルは深刻な溜息をつくと、ようやく自分のことを俺に話してくれる気になった。


エル「お兄ちゃんは、レンと言うんですけど、誰よりも他人のことを理解しようとする優しい人でした。」


正直、優しいという情報しか入ってこなかった。普段の氷の笑顔を含む上品な印象と、まさかの[お兄ちゃん]呼びのギャップで一瞬怯む。


「お兄さんとトオルさんの関係は?あと、君とトオルさんの関係も……。」


エル「お兄ちゃんがこの高校に入学して数ヶ月が経ってから、よく学校での話を夕食中にするようになったんです。そのときよくお兄ちゃんが話していたのが、カイトさんっていう人とトオルさんの話でした。トオルさんについては、あまり話したことはないけど、すごく憧れてて話してみたいって。」


エルは初めて不器用な笑顔でそう話す。お兄さんの話を聞くことがエルには嬉しいことだったのだろう。


エル「私とトオルさんは、私が入学したての頃に、どんな人なのか気になって会いに行って、レンの妹とご挨拶をしたくらいです。」


けれど、この間の反応を見る限り、エルとトオルさんの間には何かがあったのだろう。


エル「私はこの学校に、直接確認するために入学したんです。お兄ちゃんが死んだ理由が分からないままなんて嫌だった……。だから、校長先生に直接聞こうと思った。だっておかしいじゃないですか。自殺の理由が不明なままなんて……。校長先生は絶対に何かを隠してます……。」


校長は自殺という結果を使い、この高校の存続を確かなものにした。けれど、やはり家族から見れば校長が何かを隠していると思うのだろう。


エル「校長室に直接聞きに行こうと思ったら、トオルさんに止められました。レンの死んだ理由は、本当に分からないんだって言われました。」


今の話を聞いて、この間のトオルさんの無表情の意味がようやく理解できた。きっと、トオルさんはエルのお兄さんが死んだ理由を知っている。けれど、エルには言いたくないんだろう。


エル「だからカケルさん!お願いです……、あなたは校長と何をしているんですか!」


感情が抑えきれずにエルは涙を流し始める。もう言ってしまおうかと思った。エルが抱える思いは、俺には分からない。そして俺が校長としていることは、おそらくエルのお兄さんとは関係がない。なら、それを言ってしまえば、少しはエルの気も落ち着くのではないだろうか?


「実は……。」


タクミ「へぇー、やけに帰ってこないと思ったらこんな所にいたのか。」


俺の言葉を遮るようにタクミが入り口で俺に話しかける。


チホ「あー!何で?!何でカケルが屋上で女の子と話してるの?!しかも泣かせてるし!」


めんどくさいことになったな……。


タクミ「もしかしてもう付き合って長い的なオチ?」


タクミはいつものノリで話す。


「ちげーよ、目がかゆいって言うからありえない量の目薬を目に入れてあげてさしあげたんだよ。」


動揺のあまり、すぐに状況に馴染めたはいいものの、日本語が変になるわ、返しもありえないことになるわで最悪だ……。


チホ「はぁ、何だそういうことかぁ……。」


これで信じるのはさすがに将来が心配になるが、今はチホの天然に助かる。


エル「はぁ……、日を改めた方がよろしいですね。カケルさん、また今度。いいお返事を期待しております。」


何でエルはエルで、そんな紛らわしい捨て台詞を吐いていくの?

予想通りチホの質問攻めは止まらなくなったが、落ち着いてからチホは先に屋上を後にした。


タクミ「ダメだろ、()()()()()()秘密にしておかないと。」


は?どういうことだ?


「タクミ?何でお前がそんなこと……。」


タクミは優しい笑顔を俺に向けると、話題をそらす。


タクミ「チホのことも最後まであのままなんてことはするなよ。あいつの天然に頼って、逃げてるだけにしか見えないぞ。」


分かってる。いつかはちゃんと考えなければいけない。それでも、まだ恋愛をしている場合ではなかった。一歩間違えればいつ警察に捕まるか分からない俺が、誰かと付き合うなんて考えるだけ失礼だ。

タクミは俺をよく理解してくれているのだろう。けれど、それだけに俺の秘密を知っているかのような言葉が、今の俺には気になってしょうがなかった。


最後まで見ていただき、ありがとうございます!

〈トオル〉、〈レン〉、〈カイト〉、〈2年前の事件〉に関しましては、前作の「ゲーム」の登場人物となっております。よろしければ、そちらもぜひご覧になってください!

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