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3話 無への行動(カケル視点)

やることは単純だ。接触せずに犯人の殺意を抑えればいい。俺はチホを尾行して、まず誰がチホを狙っているのかを特定する。ストーカーじゃない、尾行だ。


校長「誰が犯人か分かったかい?」


能天気すぎる……。


「まだ分かりませんよ。それにこの手の犯人はいきなりくるから尾行しても意味ない気が……。」


と言いつつも、過去3人は全員尾行の時点で引っかかっている。


校長「どうせもう違法もなにもないんだ。できることを全てやっておきたまえ。」


依頼は校長から受けたものだが、反論はできない。

もともと未成年が捜査しているという違法をおかしているのは自分だ。

溜息をつき、俺は校長室を後にする。そして、


「何か聞きたいことは聞けたのか?」


俺が校長室に来る前からずっと後をつけてきた人に話しかける。


??「いえ、カケルさんは何をするためにわざわざ毎日校長室を出入りしているのか、少し疑問に思いまして。」


その人は、()()()()をくずさないまま、ストレートに俺に問いかける。

てか、何で俺の名前知ってるの?


「進路について、校長先生に推薦をもらおうと思ってね。」


生憎、校長室は完全防音。盗聴器でもない限り、外から話を聞くことはできないだろう。


??「高校1年で推薦をもらおうと思っていらっしゃるの?」


「だから、相手にしてくれないから毎日交渉に来てるんだよ」


俺を違法の道へと引きずり込んだこの頭の回転に感謝する。この手の言い合いでは負ける気がしない。

俺らの間に冷たい空気が漂う。その空気を切るようにエルと呼ぶ声が聞こえ、彼女がそちらを振り返る。

俺はそのとき初めて彼女の名前を知った。


エル「トオルさん……。」


トオル……?ってあの2年前の……?

その人は校長室を見ると、少し悲しい顔をしてエルに話しかける。


トオル「まだ……、探ってるの?」


エル「妹が兄の自殺の理由を探って何が悪いのですか……?」


その言葉を聞き、トオルさんはまた悲しい顔をする。

エルは走って去っていく。


トオル「君は?」


俺とトオルさんは、少し話をするために屋上に行くことにした。



「エルは何を探っているんですか?さっき兄が自殺したって言っていましたけど……。」


俺自身、エルの兄と関わった覚えはない。けれど今のエルは明らかに俺をつけている。だいたいの予想はできていたが、確認のために聞いてみた。


トオル「エルちゃんのお兄さんは、死んだんだ。2年前に。エルちゃんが探っているのはお兄さんの自殺理由。だから、自殺として処理した警察のほかに、その処理を後押しした校長の周辺を探っているんだよ。」


やはり予想通りエルは俺ではなく、()()()()()()()()()俺を探っていたのか。それにしても、


「校長といい、トオルさんといい、エルといい、みんなまるで2年前の事件が自殺ではないかのような口ぶりですね。」


少し調子に乗ってしまったと思い、反省して謝罪をしようとトオルさんの方を見ると、トオルさんは無表情に遠くを見つめる。


トオル「自殺……じゃないのかもしれないな……。けれど間違いなく他殺ではないよ。」


トオルさんは思いつめて、最後には俺に笑いかけてそう言う。

自慢ではないが、俺は人の表情でだいたい何があったのかが分かる。けれどそのときのトオルさんの表情は、全く何も分からなかった……。



チホの尾行を続けて、3日経ってもそれらしき人は現れない。予告通りなら、2日前にはチホは殺されるはずだった。


チホ「なぁに?そんな思いつめた顔して。」


「あぁ悪い、チホに見惚れてた。」


チホが顔を林檎よりも真っ赤に染める。


タクミ「何それ?キザ男の口説き文句?」


「冗談だよ。」


チホの怒る声が聞こえるが、そんなことはどうでもいい。まずい、今頃になって後をつけられてる。一瞬カーブミラーで確認したが、エルではなかった。

気を抜いていた。まさか実行するとは思っていなかった。

本来最も早く済む方法は、ストーカーの瞬間を撮った写真を犯人の手に届け、そこに拡散したと書くだけだ。そうすれば犯人はネットを確認して自分のストーカー姿を見て尻尾巻いて逃走する。

まぁ本当は拡散などするはずもなく、ハッキングで犯人のスマホにその写真を送っているだけだ。個人のスマホにハッキングできるのか疑問だが、実際に犯人が逃走するのを見ると、できるのだろう。それは校長がやっているから分からない。

けれど今回は何も準備ができていない。

考えろ……、何か丸く収める方法を……。



校長「やってくれたね、カケル君。」


予想はしていたが、チホのストーカーとの一件があった翌日、俺は校長室に呼び出されていた。


「あの状況ならチホの命が最優先です。個人的には、あの状況で1番《無》に近い形かと……。」


あの後俺は、タクミとチホを誘導して交番の前を通りかかった。

そしてスマホに[後ろ フード ストーカー]とメモをして、交番にいる警察にバレないよう見せた。


校長「君が事情聴取を受けている事実があるのにも関わらず、それが《無》だと?」



怒られた……。あれほど怒られることがあるのだろうか……。普段能天気なぶん、怒ったときの衝撃は、軽く恐怖を覚えた。


「で……、今度は何?」


もう日課ですらある。


エル「カケルさんが何をしているのか話してくれるまで、こうし続けよう思いまして。」


ニッコリと笑うエルの笑顔は、相変わらず今日も完璧だった。





最後まで見ていただき、ありがとうございます!

〈トオル〉、〈2年前の事件〉に関しましては、全て「ゲーム」に関するお話となっております。

よろしければ、そちらもご覧になってください!

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