2話 日常のなか(カケル視点)
この高校に送られるメール類は、全て校長室のパソコンに送られるようになっている。そこを仲介とすることは、おかしいことではない。何より、殺人予告を隠蔽する手間も省けるだろう。俺はこの依頼を受けて半年間、3件の殺人予告を無とした。
チホ「カーケール!おっはよー!」
タクミ「またボーっとして、考え事か?」
元気な方はチホ。最初は俺がタクミといるところに、いきなり突っ込んできた距離感のわからない人だ。タクミは俺が校内でよく一緒にいる友達。もちろん2人は殺人予告のことは知らない。
「それゃ青春真っ只中の高校生なんだから考え事もするさ。」
タクミ「何?告白されたの?」
チホがあからさまに動揺する。わかりやすすぎて何も言えない。
「冗談だよ。朝から無になってただけ。」
チホが安堵のため息をつく。隠す気あんのかこいつ……。
*
校長室への呼び出し。この半年で4度目になるが、そのすべてがスマホでの連絡によるものだ。放送で何度も呼び出すと怪しまれるからという当たり前のことだが、生徒と簡単に連絡先を交換するあたり、この校長は既に手段を選んでいない。
校長「また殺人予告だよ、カケル君。」
でしょうね。それ以外で呼び出されたことないからね。それは、今更だと言いたい気持ちを抑え、その内容を聞くことにする。
「いつ?ターゲットは?」
校長「明日だよ。ターゲットは、君のクラスのチホさん。」
驚くことはない。この依頼を受けている時点で、多かれ少なかれ知り合いが狙われることはありえる。
「はいはい、いつも通りチホを尾行してすべて無かったことにすればいいんだろ。」
さすがに慣れているとはいえ、気は進まない。この仕事は、犯人、ターゲット、または全く別の目撃者を作らないようにしなければならない。
すべて無に……、平和なように聞こえるが、犯人に殺させないようにするだけで、殺す気を無くすよう説得することも、捕らえることもできない。
校長室から出ると、不自然に見たことのない女子とぶつかる。
「ごめん、まさかいるとは思わなくて……。」
??「いえ……、こちらが扉の前に立っていたのがいけなかったので……。」
丁寧に謝罪を述べる彼女は、少し上品な雰囲気を纏っている。けれど、校長室の扉の前に立っていたのが少し気になり、そのまま去っていこうとするその人に声をかける。
「なぁ、何か聞きたいことでもあったの?」
少しストレートすぎただろうか。けれど疑問が残りどうしても聞かなければおさまってくれない。
しかし、彼女はこちらに微笑みかけた。あまりに綺麗な笑顔で……。
??「いえ……、何もありませんよ。」
その不自然なまでに綺麗な笑顔に、少し恐怖をおぼえる。間違いなく彼女は何か秘密を隠している。
教室に帰ると、タクミとチホが俺を待っていた。
タクミ「おせぇよ、どこに行ってたんだよ。」
「悪い、精神を鍛えるためにとある個室にこもってた。」
タクミ「あぁ、トイレな。」
タクミはいつも何でも信じてくれる。そんなタクミを騙しているようで心が痛むが、どうしてもあの依頼についてはタクミにも話せなかった。
チホ「いーいーかーら!早く帰ろ!」
いつも元気に俺らと一緒にいるチホ。こんな娘が誰かに命を狙われることなんてあるのだろうか……。
俺の仕事は、犯罪を無にすることで命を救える。けれど、それはターゲットが狙われてることに気付かないまま終わらせるということだ。誰からも感謝されず、誰にも求められていない。
けどまぁ……、それで誰かを救えるならそれでもいいのかもしれない。
合法で人を救えないのであれば、違法で人を救う。
間違えなんてない……、最初から間違えなのだから。
それでも俺は、明日のチホを救うため、何としても無かったこととして処理するために行動する……。
最後まで見ていただき、ありがとうございます!
これからも前作のキャラが出てくる予定なので、ぜひ「ゲーム」の方も見てください!




