11話 笑いあえるその日まで……(カケル視点)
どうして気付いてあげられなかったのだろう。いつもそうだった、チホだけじゃないタクミの背負っていたものも全部。そして今度はエルまで……。トオルさんが救急車に運ばれたあと、俺は無我夢中で屋上へ走った。俺らはいつだってそうだ、何かあればすぐ屋上に行く。予想通りエルはそこにいた。あまりに寂しい背中をこちらに向けて、少し肩を震わせながら。
エル「どうして来たの?」
その問いかけの意味を理解するのに少し時間がかかる。俺は何をしたくてエルのもとへ来たのだろう。
「俺は……、ここ数日間で色々な人と多くの経験をした。」
何が言いたいのかさっぱり分からない。
「チホとタクミのこと、校長のこと、トオルさんのこと、そしてエルのこと。俺の得意分野は人の感情を読むことだ。相手の表情から何を思っているのか、本当は何を考えているのかが嫌という程分かってしまう。だけどそのはずなのに気付けなかったんだ。」
この時、少し荒っぽい口調になった。それは何かを訴えるようで、今更気持ち悪い。
「ずっと近くにいたはずなのに……!チホの心が狂ったのも!タクミが傷付きながら頑張っていたのも……!全部見て見ぬ振りして気付いてやれなかったんだ……。」
あぁそうか、俺がここに来た理由なんて簡単なものだったんだ。けどもう遅いかな?
「気付いてやるのが遅くてごめん。君のことが好きだから、迎えに来た。」
随分と遠回りしたな……。
エルは何も言わずに俺に抱きつく。そこからのことはよく思い出せない。後日、チホとタクミとエルの3人は退学処分となった。タクミとチホは出所後すぐに高校卒業認定のテストを受けるらしい。結局ひとりになった俺は地元の私立高校に転校し、3年の夏にいち早く推薦で大学を決めた。カケルさんはあの後、退院してからエルに事実を全て伝えたらしい。エルは泣きながらではあったが、全てを受け入れた。現在は就活もぼちぼち、結局大切な人には出会えてないという。
エル「またぼーっとしてる。」
「随分と濃い高校生活だったなと思って、特に1年。」
エルは現在、出所して高卒認定を貰い大学に通っている。そして、俺の家に住み込み半同棲と化している。
エル「遠回りして、不器用で、何もかも遅れてくるヒーローだったけど、確かに君はみんなを助けたヒーローだったよ。」
ありがとうの言葉はしまっておいた。そんなありきたりな言葉を今のエルに伝えてもしょうがない。だから自分の気持ちを全て込めてこう伝えた。
「大好きだよ。」
エル「知ってる。」
全く会った時から変わらず生意気だ。
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