10話 永久未解決事件(トオル視点)
廃校が発表された翌日、俺は校長室に呼ばれた。
校長「3年生は本来、別施設で受験、卒業まで見ることなっているが、君は大学が決まっているから卒業扱いにすることになった。」
妥当な措置だろう。クラス全員同時自殺のなかでたった1人の生き残りなんて、気味が悪いからみんな怖がるだろう。
校長「ここからは個人的な最後の頼みだ。2年前に君が見たもの話してくれないか?」
この学校は廃校が決定した。生徒が死んだ経緯なんて、もはや校長という立場もあと1ヶ月の称号のようなものになった彼がどうして気にするのだろう。
「どうしてそんなにも自分の生徒が死んだ理由を探したいと思うんだよ……。周りはみんな見て見ぬふりをしようとしてる。あいつらはみんな自殺と断定された。だったらあんたも見なかったことにすればいいだろ……。」
校長「私が背負いたいと思ったのは彼らの死ではなく君の辛さだよ。いつまでひとりで抱え込んでいるつもりだい?」
自分でも分からないうちに口からは感情が溢れていた。それと同時に我慢していたものを吐き出すように俺は全てを話した。
目の前で起こった猟奇的殺人。
全てを背負わせて追い込んでしまった自殺。
俺が今ここに存在しているのは、俺の命を助けてくれた人がいるからだ。
俺を助けてくれたレンは、それが原因となってこの世を去った。
そして、どうしても思い出すことのできない、とても大切な誰か。
信じてくれるかは分からない。信じない方が自然だ。けれど俺は何かに縋るように、自分が見た惨劇を、あの日感じた想いを全て校長にぶつけた。
校長「そんなものずっと抱えて過ごしていたというのかい?」
「今生きてるだけで俺は幸せだ。あいつらの方が辛かった。絶対に……。」
校長室を出たとき、身体が少し軽かった。校長は明日に旧校舎の取り壊しを頼むそうだ。それで彼らがあそこから解放されることを望む。
気がかりなのは記憶の中にいる誰かだ。その子は今どうしているのだろう。名前も声も思い出せないけど、幸せに過ごしていてほしい。
帰りに旧校舎に花束を置くことにして、歩き出す。
すると突然背中に激痛が走る。けれどそれは一瞬だった。足に生暖かい液体の垂れる感覚を感じて、気付いたときには倒れていた。
オレ……ハ……?
エル「トオルさんのせいでお兄ちゃんは死んだんですね。」
「エル……ちゃ……、」
だんだんと眠気を感じてくる。その頃には痛みを感じないほど感覚が麻痺していた。
***
???「……ル……ん!……オル……ん!トオルさん!」
声が聞こえる。あれ?俺は……?
途端に背中に痛みを感じた。
カケル「動かないでください!もう少しで救急車が来るので、頑張ってください!」
そうか、俺は刺されたのか……。
少し時間が空いたらしく、エルちゃんは消えていた。
カケル「先生が言うには急所は外れていて、この止血で病院までの時間は稼げるって、だから必ず生きててください!思い出せなくても、大切な人がまだいるんでしょ!あなたには!」
そうか……。カケルくんはまだ会って間もない俺のことをそんなにも心配してくれるんだな……。
けど今君が心配するのは俺じゃない……。
俺はカケル君の手を掴み、訴えるように託した。
「頼む……。俺と約束してくれ。エルちゃんを必ず救うと……。」
次に目が覚めると病室にいた。彼がどうなったのか、彼女がどうなったのかはまだ分からない。けれどカケル君なら彼女を救えると信じている……。
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