毒々と名前
3枚のシャツを使い分ける今日この頃
「んぁ...」
視界が開けてきた。ここはどこだろう。もちろん、そんなことを考えたところでここがどこかなんて分かるはずも無いが。でも、辛うじて今いる場所をどういった固有名詞で呼称したら良いかはわかった。
森だ。見渡す限り森、正確には森ではなく木だが、そんなことをいちいち独りで考えるのは余りにも虚しいのでやめた。ひょいと身軽に立ち上がった俺は体の変化に気づいた。
「左腕が.....違う!」
いや、確かに腕の形はしている。だが、俺の思う普通とはかけ離れていて、何というか............毒々しい。その毒々しい腕は今まで(起きてから数分経ったかどうかだが)気づかなかったことを疑うほどの腐敗臭を漂わせている。俺はすぐさま服を脱ぎ、自分の体がどこまで毒々しくなっているのかを確認した。体は左の鎖骨辺りから腰にかけて毒々しくなっていた。
「マジか....」
これを見て悲嘆に暮れるのは、ただ臭くて気持ちが悪いからではない。これでまた、ぼっ○になると思うと、怖いからだ。そもそも、こんな腕を付けていたら念願の異世界ハーレム生活が出来なくなってしまう。折角、トール神に転生特典を貰ったのに、
....ドォン!!
突然、地面が揺れた。頭上を鳥(らしき生き物)が飛び去っていく。そして、俺は無様にも、大きく、大きく、フィクションじみた感じでよろけ、左腕を近くの木にぶっつけていた。腕はグシャッと変形し、少し伸びている感じだったが、不思議と痛みはなかった。
「うえぇ、我ながらキメェな。」
そんなことを言いながら、俺は揺れのことが気になって鳥が飛んで来た方角へと足を進めていた。
程なくして、俺は揺れの原因に辿り着いた。木2、3本
を隔てて、僧侶風の人がゾンビの様なモンスター6体に囲まれていた。おそらくこれだろう。自分が頭の中で状況を整理している最中、いきなり1匹のゾンビがその人に数歩踏み込んで、腕を振りあげた。
その人は何とか腕をかわすが、見た目以上に腕振りは強烈でその人は、尻もちをついた。そこに間髪入れずゾンビの腕が伸びる。
もう、俺は飛び出していた。
左腕を文字通り伸ばし、ゾンビの攻撃を受け止め、その隙にその人の隣に構えた。ここまでの情報から大分左腕のことが分かってきた。この腕は形状を変化させることが出来て、かつ、硬度もある程度変えることが出来る。操作性は驚く程良いし、ほとんど自分の腕を普通に動かす様な感じで思った通りの動きが出来る。であれば...
「本当は敵役用の技で妄想してたんだけど....」
腕の形状を変えていく、肘と手首からちょうど半分ずつぐらいのところから、大きく鋭利に手の様に.....
「腐法の黒爪...!」
そう恥ずかしげもなく格好つけると俺は自分自身と同じくらいの大きさのあるその手を勢いよく前方のゾンビ3体に叩きつけた。すると、ゾンビは面白いくらいにすっ飛び、少し離れた木にぶつかってグシャッと潰
れた。それを見た他のゾンビは一目散にノロノロと逃げ出した。
「大丈夫?」
そう言ってまだ尻もちをつきっぱなしのさっきの人に右腕を差し出す。と同時にふらっと来た。
くそっ、キツイ。さっきの戦闘は生まれて初めて(前世も含む)だったからかそれともこの恐らく転生特典であろうゾンビの腕を使ったからか、いずれにせよ、なんという燃費の悪く、雰囲気も悪い微妙な能力だろうか。
「次、トールに会ったら絶対にコロス...」
ボソボソと呟いていたら
「助けて頂いてありがとうございます。」
さっきの人が..おっと、こいつはなんという美少女だ。金髪はサラサラで、パチパチ瞬かせる瞳は淡い紫色で透き通ってい....マズイ、意識がトびそうだ。
「良ければ、名前を教えて頂けませんでしょうか?」
答えねば。またとないハーレムチャンスだ。
「絶対にコロス...」
「コロ...ス?」
不味い。彼女がぼやきを名前として聞き取ってしまった。もっと色々、勇者名前案はあったのに、せめてここから挽回を...
「ブレイ..」
「ブレイ?」
良し、悪くない。あともう一言。
「トール。」
「トール...。コロス・ブレイトールさんですね!」
あぁ。違う。そんなトールはいらないよ。
...バタッ
俺は気絶した。
ホントは真面目にあとがき書いたんですけどねぇ消えたんでねぇ
勘弁して下さぃ