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第2話:雄太の怒りと別れ

数日後、俺は本格的に仕事を探し始めた。

美緒は私のお金で一生、暮らしましょうと言ってくれたものの、

やはり男としてそれでは恥ずかしかった。

しかし、中卒の俺を雇ってくれる会社が簡単に見つかるわけもなく、

来る日も来る日も採用試験や面接を受けに行くが、

帰ってくるのは不採用の通知のみ。俺の精神はどんどん疲弊していった。

そんな俺を側で支えてくれた美緒は、ある日俺に一枚の紙を手渡した。

見ると「常盤工業 企業説明会のお知らせ」と書かれていた。

常盤工業といえば、美緒の父親の会社が業務提携している会社だ。

「雄太さん、これ行ってみない?雄太さんのことはもう先方に伝えているから」

俺としては少しの葛藤はあったものの、

せっかく美緒がくれたチャンスを無下にするわけにはいかなかった。

「ありがとう。行ってみるよ。」

美緒は笑顔を向けてくれ、抱き付いてきた。

この笑顔のためになら、俺は何もいらない。そう思えるほどだった。


翌日、美緒に勧められた常盤工業に行こうとしていると

美緒が「雄太さん、少し目を瞑って」と頬を染めながら言われた、

どうしたんだろう。そう思いながら目を軽く閉じた。

すると唇に温かくて柔らかいものが触れた。

俺は驚き目を開けた。すると美緒から口づけをされていた。

実際は数秒だったが、俺には数十分にも感じられた。

そして美緒は自分の唇を俺の唇から離すと、

「今日は特別だよ。頑張ってきてね!」と満面の笑顔で俺を送り出してくれた。

俺の心臓は飛び出ていくのではないかと思うぐらいにドキドキしていた。


説明会が終わり、俺は他の人と同様に出口に向かって歩いていた。

すると後ろの方から、誰かが俺の肩を叩いた。

俺が振り返ると、いかにも偉い感じの高いスーツを着た男性が立っていた。

「君が加藤雄太君だね?君のことは美緒さんから聞いているよ」

俺は、美緒が俺のことを言ってくれた人がこの人なのだと、その言葉で分かった。

「あ、申し遅れたね。私は常盤工業の専務をしている山野楓だ。よろしく」

男性は自分の役職と名前を名乗り握手を求めてきたが、

俺にはなんで専務がいて、挨拶をされたのか分からなかったが、握手をした。

「それで、今から時間あるかな?説明しておきたいこともあるからね」

時間は有り余っている俺にとっては、何の問題もなかったものの、

説明って何の?という疑問がさらに浮かび、申し訳なさげに尋ねた。

「時間はありますけど説明って何のですか?」

しかし、楓さんの反応は意外なものだった。

「あれ?もしかして美緒さんから聞いていないのか?この説明会の意味を」

俺は頷くくとしかできなかったが、楓さんは納得したようだった。

「そうだったのか・・・。あ、だからさっきから

何回か迷っているような素振りを見せていたんだね。

簡単に言うと。君の採用はもう決まっているんだ。

それで顔合わせと業務の説明をと思っていたんだが、

そういうことなら一度、美緒さんと話をしてから、

連絡をしてくれるといいよ。

ちなみに私はキミの事を採用したいと思っているからね。」

楓さんは伝え終わると、部屋から出て行った。

俺は何が何だか分からず、

気が付けば家についていた。


家に入ると、美緒が飛びついてきた

「雄太さん、どうだった?楓さん、いい人でしょ!これで就職先も決まりましたね」

美緒は楓さんのオファーを受けたと思っているのか、かなり興奮気味に言っていた。

「いや、まだ受けてないし、というかいったいどういうことなんだ!!」

少し怒鳴るような感じで言ったためか、目の前にいた美緒は

笑顔から一変、泣きそうな顔になってしまった。

「だ、だって。雄太さん、全然就職先が決まらなくて、

落ち込んでいて・・・わ、わたしにでき、ることはな、ないかなぁって。

そ、それでね、楓さんに電話をかけたら、今度の説明会に来てほしい…って言われて」

美緒は涙を流しながら、しどろもどろに説明してくれたが、怒りを抑えられなかった。

「それをなんで行く前に行ってくれなかったんだよ」

あまりの剣幕にとうとう美緒は大泣きしてしまい、

過呼吸になってしまったが、あまりの怒りに

俺はその状態の美緒を放置したまま、部屋へと向かい、

着替えると財布と携帯を持って、まだ泣いている美緒の横を

通り過ぎ出て行った。


俺が行く寸前に美緒は「ま、待って、行かないで‼雄太さん!」

と叫んでいたが、それを無視した。



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