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大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
99/1603

8

「おい、フォルティス王」

「おや、何か用かな?」


 謁見の間、王同士であることもあり、兵なども一時的に部屋を出ている。

 この場では一対一、王としての礼儀なども無視して発言できる。

 そんな状況だからか、彼はいつにも増して怒りを滲ませ、口調も荒くなっていた。話し合いでの解決をする気配を見せず、正面から啖呵を切りに来たようにしか見えない。


「俺と勝負しろ」

「いきなり何かと思ったら、勝負かい? まぁいいよ、もう一度やってみたいと思っていたから」

「俺が勝ったら、現在行われている不当なまでの徴税を止めろ」

「ふぅーん。で、僕が勝ったら?」

「善大王を破るだけの実力があるとでも言いふらせばいい。皇が倒されたなんていうのは、こっちの国としては汚名もいいところだ」


 愉快そうに笑ったフォルティス王は無垢な笑みを浮かべる。


「そっちが光の国を引き合いに出すなら、こっちも水の国を出そう。水の国は善大王を倒すだけの力を持っている──そっちの方が、後々軍事力を高めた時に煽り文として使える」

「勝手にしろ」

「じゃ、戦う場所はこっち指定でいいね? うーん、そうだね……前に戦った決闘場でするとしようか」


 そうして二人はかつて戦った決闘場へと向かった。

 片や面白そうに微笑み、片や眉を顰めているという状況。相反する反応をしている二人に興味が向いたらしく、移動中も民衆からの目線が集まった。

 到着早々、再び彼らは向かい合う。

 以前は特別罪人と兵士。今は善大王と水の国の王。

 互いに違う立場での戦い。善大王は多くの者を救う為、フォルティス王は自国の軍事力を示す為。

 壁に立てかけてある薙刀を取り、品定めをするように素振りをしていた。

 善大王はというと、案の定得物を使わず、素手のまま構えている。


「勝負の合図はどうする?」

「俺は無理を言っている自覚はある。だから、それはお前に任せる」

「不意打ちでも何でもいいってことか……自信あるみたいだね」

「どうとでも取ればいい。お前の考えが間違っていることを、俺が教えてやる」

「へぇ、面白そうだ。でも、そういうことは勝ってから言うべきだね。全てにおいて勝者が正しいんだから」

「そういう考えが間違っていると俺は言っている!」


 その言葉への返答とするように、喉元に目掛けて刃が迫る。善大王を煽り文にするという口ぶりとは対照的に、一撃目から殺しにきていた。

 攻撃を瞬時に見切り、善大王は大きく仰け反った。

 仰け反りというよりかはそのまま倒れこんでいるような動作だったが、素早く手を付け、ブリッジのような姿勢に変える。

 あまりに予期せぬ行動だった為か、フォルティス王の処理は遅れる。ただ、その遅れすらさほど影響を及ぼさない。

 そのまま後転するように足蹴りを放ち、薙刀を弾き飛ばしながら元の立ち体勢に戻る。

 それはティアのアクロバットから着想を得た返し技だった。

 二人は会話を交わすことはなく、武器を弾かれたフォルティス王は止まらずに《魔導式》の展開を開始する。

 善大王は咄嗟に距離を取ろうとするが、フォルティス王はそのまま追跡する。

 相手が格闘戦に特化していないと知っているだけに、攻めの姿勢を取れるのだろう。そして、そもそも善大王相手ならば素手でも下せる自信があるのだろう。

 薙刀を拾いにいかないことを不審に思いこそする善大王だが、すぐにフォルティス王という人間の性質を思い出す。


「(こいつは逃げにみえる行動はしない奴だろうな)」


 善大王も《魔導式》を展開し始めていたが、フォルティス王が先制を取る。


「《水の二十番・液杖(リクイッドロッド)》」


 詠唱と同時に彼の手から棒状の青い液体が伸びる。低順列で攻撃力の少ない水属性であるからして致命傷には至らないが、それでも一発分の隙を作れば体技での攻撃に続く。

 用意している術で迎撃するというのも手だが、善大王はティアに敗北した戒めも含めて体術で応戦した。

 攻撃を紙一重で回避し、その上で動作が大きくなる蹴りを叩きこむ。

 無論、それを受けるフォルティス王でもなく、地団駄のように地面を叩き、跳ねてから蹴りの軌道をから外れる。

 フォルティス王の術は一発限りではない為、回避された後も維持されていた。

 そのまま彼は攻撃に移るか──と思われた時、大きく後方へと跳んだ。


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