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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
977/1603

10v

 それから何日かが過ぎた。

 ガムラオルスは過剰な導力の精製により、たまに目を覚ますことはあっても、水飲みや軽食を済ませるとすぐに寝てしまった。

 疲弊の傾向の強い彼を看病していたスケープは、彼の為の食事や水を用意し、まれに彼の体を拭いて清潔を保っていた。


 彼女はこうして見守っているだけで、彼がどれほど苦労して治療に当たったのかを想像し、申し訳なさやありがたさを感じ始めていた。。

 他人事を他人事とせず、自分の事と重ね合わせながら考えるなど、彼女らしくもない共感性に富んだ行為だった。


「あなたはどうして、他人に優しくできるの?」


 答えはない。

 ただ、彼女もそれが返ってくるとは思わなかったらしく、頭の中で思考を巡らせた。


「(ワタシの体が目当て? それとも、同情? ……盗賊になったのなら、ワタシに価値なんてないはずなのに)」


 彼女は未だに、自分とガムラオルスを繋げているものは、アジトの場所――盗賊ギルドを壊滅させる為の情報だと考えていた。

 それに次ぐ要素が体。文字通り、この二つだけ(・・)が確固たるものだと思っていたのだ。


『何かを悩んでいるのか?』


 その声は、スタンレーのものだった。


「ご無事だったんですか?」

『死の未来は覆した。これでもう、おれはやるべきことを成した』

「えっ」

『お前と接触する必要はもうないだろう。予見したものと違ってはいたが、お前にはお前の居場所ができたんだろう?』


 普段とは違う優しげな声に、スケープは困惑した。


「居場所は……ワタシの居場所は、スタンレーさんのところだけです」

『おれはお前に多くを教えた。お前が一人になったとしても、生きてけるように――おれがお前を必要としなくなったのと同じように、お前もおれが居なくても問題はないはずだ』

「そんなっ――ワタシはこれから、どうしたら……命令してください。ワタシは何をしたらいいんですか」

「……スタンレーと話しているのか?」


 唐突に聞こえてきた男の声は、眠っているはずのガムラオルスのものだった。


「あっ、これは……ただの独りご――」

『話があるなら、そいつにしてやれ。全てを計算していたわけではないが、この男はとてもお前にとって都合の良い男らしい』

「……分かっている。お前がどうであれ、俺は付き合ってやる。こうして盗賊になったからには、一蓮托生(いちれんたくしょう)だ」


 まるでスタンレーの会話に対応しているような内容だったからか、宇ケープは驚いたような顔をさいた。


「スタンレーさんの声が聞こえるんですか?」

「いや、聞こえてはいない。聞こえているとも言えるが」

「こんな時に面倒くさい格好付けはやめてください!」

「お前だろ、スタンレーは」


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