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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
976/1603

9v

 ――地下アジト内にて……。


「……ガムラオルス、さん?」


 ぼやけた視界の中に、緑色の髪をした男が映り込んでいた。

 スケープはその男を、ガムラオルス(・・・・・・)と名乗りながらもガムラオルスとは違っていた男と思い、そちらの名で呼んだ。


「ようやくか。二日はかかったぞ」

「え」


 目を擦り、覚醒していく度、視界は明瞭さを増していく。そうすると、それまで虚ろながらも存在していたガムラオルスさん(・・)は姿を消し、ただのガムラオルスが残った。


「奴らの追撃はない。だが、連中は攻め時を窺っているようだ」

「えっ、なんのことですか」

「……お前は、ウルスと戦っていたんだろ?」

「知りません」

「スタンレーの奴が来ていたのか?」

「……じゃ、ないですかね?」


 緑髪の青年は睨み付けるような表情で、スケープの顔をのぞき込む。


「スタンレーと連絡は取れるか?」

「……今は無理みたいです」

「あの変身、どういう仕組みなんだ? あれはスタンレーなのか? お前なのか?」


 質問攻めだったが、自分から話すよりも、聞かれた内容を答える方が得意――というよりも、話すことが苦手か――な彼女は嫌がらなかった。


「ワタシの神器、《屍魂布》は魂や肉体を融合させるものなんですよ。それを使って、別の人間に変身することができます」

「……つまり、あのスタンレーはお前なのか?」


 紫色の髪を弄りながら、彼女は誤魔化そうとした。

 しかし、じっと見つめたままのガムラオルスに根負けしたのか、彼女は渋々といった様子で口を開いた。


「いいえ、あれはあの人……スタンレーさんの意識ですよ。肉体はワタシのものを媒介にしていますが、限りなくあの人と同じものです」

「その意識の融合はどうやって解除される? お前の変身が解かれた時か?」

「その、はずですけど……なんですか? いきなりそんなこと聞いて」

「いや、ただ聞きたかっただけだ。それと、少しばかり長い話をするが、覚えていられるか?」


 低い声で紡がれた言葉だったからか、スケープは僅かばかりに恐怖を覚えていた。


「メ、メモは取っていいですか?」

「取れるものならな……ただ、できれば覚えておけ」


 言ってから、スケープは裸のまま寝かされていることに気付いた。


「さっき言った通り、上では善大王とウルス……それと、天の巫女がお前を――盗賊ギルドを潰す為、動いている」

「は、はい!」

「だが、連中はここ二日間ほど動くこともなく、店で何かしらの話し合いをしているそうだ」

「そうだ? どこかで聞いた話ですか?」

「――ここの盗賊に、スタンレーの名を使って命令した。だから、お前はこれから定期的に、盗賊からの報告を受けろ。そして、連中が動きだそうものなら、俺を起こせ」

「起こす……? どういうことですか? 前みたいに隠された能力を目覚めさせるって話ですか?」


 茶化したような口調で言われたにもかかわらず、叱責や怒りの言葉を述べたりはしなかった。ただ、顔は依然として睨み付けるようなものだ。


「少し疲れた。休ませてくれ」


 そう言うと、彼はスケープの眠っているベッドで横になると、彼女の豊満な胸に顔を(うず)めた。

 いつも通りに盛りの付いたオスの本性を晒した、と考えた彼女だったが、彼が本当に眠りだしたのを確認した途端に疑問を抱いた。


 彼女は周囲に一切の興味を持つことなく、観察を(おろそ)かにしてきた。だが、自身の胸の中で眠る男に対しては、強い関心を抱いていた。

 魔力を探った瞬間、いくら鈍い彼女でも気付いた。ガムラオルスのそれは、隠れているという類の減少ではなく、ソウルを使い切ったような消耗だった。


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