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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
975/1603

8

 ――ダストラム、大衆食堂にて……。


「地下……だと?」

「ああ、ガムラオルスの魔力はそこで途絶えている」


 三人は向かい合っていたが、ウルス一人が視線を逸らした。


「っても、ここのアジトはそんな深くないはずだが……」

「となると、お前が盗賊ギルドを抜けた後に事情が変わったみたいだな」


 何事もなく発せられた言葉だが、切断者は見逃さなかった。


「何故、俺が元盗賊と知っている」

「……さっきの会話を盗み聞きしてたんだ」

「まぁいい、そこは深入りするべきではなさそうだ。しかし、場所が分かったとなれば――攻め滅ぼすということか?」

「お前はどう思う?」


 よく分からない質問に、ウルスは眉を寄せた。


「どう思う……? 意味が分からないな」

「正直、俺は怪しいと思っている。中がもぬけ(・・・)の殻とは言わないが、ボスがいないという展開は十分にあり得る」

「ってことは、無駄足か?」

「一応、アジトの場所は判明したってところだな。スタンレーが運ばれるくらいだ、安っぽい拠点ではないだろう」


 これには同感らしく、切断者は頷いた。


「……らいとっ! らいとっ!」


 まるで犬のように、フィアは期待した表情で彼を見つめていた。


「それで、だ。俺は正直、アジト攻めをする時にはあんたと組みたいと思っている」

「ねぇ、らいとぉ……」

「俺と? 一応、用件は被っているが――こんな野良冒険者風情と組むつもりか?」

「ご謙遜を。戦前の時点で魔物を撃破した《紅蓮の切断者》殿だ、不足はないだろう?」

「茶化しているのか?」

「ただの癖だ、気にしないでくれ」

「魔物だったら、ライトも倒してたよね! 私の協力付きで!」

「――ただ、提案については本気だ。あのガムラオルスが敵側に回った以上、戦力は多いに越したことはない。それに、あんたの方が盗賊の勝手は分かるだろ?」


 長らく無視されているからか、フィアは頬を膨らませ、涙ぐんだ――というよりも、大粒の涙を溜めた――目で哀願していた。


「なぁ、天の巫女の相手はしなくていいのか?」

「ああ、これはいつものことだ。それに、今はマジメな話をしている最中だろ?」

「私が魔力を探ったのに!」

「ありがとな。よし、これで問題はないだろう?」

「……天の巫女がこんな(・・・)なのも驚きだが、巫女相手にその態度を取れるお前も相当だな」


 何十年も前に天の巫女を見ただけであるウルスからすれば、フィアのような例は驚きだったのだろう。

 そもそも、フィアが異質なのは歴代を通してもそうである以上、このように感じるのも仕方がない。


「とりあえず、善大王に付くとしよう。ガムラオルスが向こうに付いた時点でどうかは知れないが、現状は盗賊ギルドを壊滅させるのが摂理らしい」

「摂理、ねぇ」


 怪しむような態度を取っただけで、彼は明確な敵意や嫌悪感を滲ませたわけではなかった。


「私は手伝わないから。どーせライト冷たいだろうし」

「こういう具合だ。《紅蓮の切断者》、俺はこいつの機嫌を取らなきゃならない。打ち合わせはまた今度ということでいいか?」

「構わない。だが、早めにしたほうがいいぞ」

「分かってる。けどな、俺はあえて様子見の時間を長くするべきだと思うな」


 善大王は軽い調子だが、その裏に何かしらの意図があると察したのか、切断者は頷いた。


「夕飯時には会おう」

「……明日からか?」

「もちろん。これからはフィアと忙しくなるからな」


 高笑いをあげる皇を見て、ウルスは呆れかえった。


「ほどほどにしておけよ」

「おう、フィアが戦えなくなるまではやらねぇよ」

「ねえ! 私戦わないって言ったよね!」

「これからたっぷり褒めてやろうっていうんだから、そんな冷たいこと言うなよ」


 そう言われると、フィアは簡単な女になってしまう。とはいえ、彼女は文字通りの意味に受けとっているだけで、善大王が何をしようとしているのかを正しく理解していなかった。


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