表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
97/1603

6

 善大王は確信していた。フォルティス王は力を絶対視している。

 だからこそ、彼は無価値な文化を放擲し、彼にとって絶対な武力に全てを傾けた。

 逆に言えば、事態を解決する方法もそこに関係してくる。

 百の論を重ねようともフォルティス王は納得しないだろう。正当な理由とし、外干渉を防いでくる。

 だが、善大王としてフォルティス王を倒せば、文句は言えなくなるだろう。

 他の国ならばともかく、力を絶対とするフォルティス王ならば考えざるを得なくなる。

 さらに言えば、この政治的方向転換を賭けた決闘にすら、間違いなく乗ってくるだろう。

 そこまで分かっていても、善大王としてはこの方法はよいものではないと考えていた。

 暴力での解決ほど釈然としないものはない。彼は少女を日常的に襲うような破綻した人間ではあるが、やはり常識を持ち合わせているのだ。


「勝てるの?」

「前見た実力を見る限りは、おそらく勝てる。ただ、奴とて手札を全て晒しているとは到底思えない──しかし、それらは取るに足らないことだ。問題なのは、この解決法でいいのかどうか、だ」


 問題はいくつもある。具体的にいえば、善大王が力ずくで政策を変えさせたという事実が残ること。

 これはいかなる状況だとしても、他国に対して悪い影響を及ぼす。

 フォルティス王が敗北の結果を周知するとは思えないが、少なくとも事実だけは揺るがない。


「じゃあ……」

「はっきり言う、手を出さないのが無難だ」


 善大王になってまだ一年も経っていないが、彼は彼なりに王らしさを身につけていた。

 ただ、それを納得できるフィアでもなく、不満そうに俯いた。


「フィア、俺は飽くまでも王だ。光の国の看板を背負っている」

「それは、分かってる。私も姫だから」


 姫の自覚があるとは思えない人間性だったが、などと茶化すこともなく、善大王は窓際に立った。

 外の民を見るだけで、その国の状況はある程度把握できる。

 十割が満足した表情をした国はない。それでも、光の国は過半数を上回る数値の人間が笑みを浮かべて生きている。

 暮らしやすく、治安も良く、信仰による意識革命などが行われていることが原因ではあるが、最大の要因は害がないことだろう。

 善大王ができるのは、反面教師にすることくらい。このような国にならないように手を尽くしていくことだけだ。

 しばらくし、彼はフィアを部屋に残して外に出た。

 問題を解決しようとして動き出したのではなく、ただの気分転換の散策。その為、フィアを連れずに出ている。

 彼が町を歩いていると、再び文句を言っている集団が目に入る。

 別々の集団が各地で波状的に行動をしているのだ。もちろん、シアンが全てを抑えられるわけではなく、多くがある程度の時間を浪費した時点で自然消滅する。

 水の国の人間は血気盛んではない為、不満こそいえど暴力に発展することは少ない。火の国であればすぐに殴り合いになってもおかしくないが。

 ここでの問題は結果ではなく、現在起きている現象だ。

 いくら攻撃性がないとはいえ、なにも起こらないとは断定できない。シアンもそれは承知である為、今のような活動を止めることはないだろう。

 全てを処理していないとはいえ、シアンは全力でことに当たり、謝罪して回っている。彼女の精神的負担は決して軽くない。


「……合理的に、効率的に──シナヴァリアならそう考えて動かないだろうな、確実に」


 彼の頭には自国宰相の仏頂面が浮かび上がっていた。

 一般的にいえば怖いはずのそれを思い出しながらも、彼は笑う。


「まったく持って不真面目な王様だ」


 善大王は決意をし、シアンを探した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ