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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
966/1603

15s

 ――現代……火の国、ダストラムにて。


「(あの後、師匠は戻ってこなかった。もちろん、巫女様も――あの後、三人がどこに消えたかは分からないが、スタンレーが巫女様と関係がある可能性は高い)」


 明確にその可能性を感じ取ったのは、ごく最近のことだった。

 彼の実力は、明らかに《選ばれし三柱(トリニティア)》クラスの――人間としての規格から外れたものだった。

 その上、全属性を使えるともあれば、異常性は並外れたものとなる。

 なにより、彼の持つ空色の瞳は先々代の天の巫女、《空色の宝石》とも謳われた彼女のそれを想起させたのだ。


「(ストラウブが事情を知っている可能性も、少なからずある)」


 盗賊ギルドの壊滅、組織とギルドの関連性の調査、それらが火の国に訪れた最たる要因だった。

 だが、彼としては別の用件が主な目的となっていた。つまりは、二十八年前の真実を知る、というところだ。


「あのガキ、どこで拾った」

「……砂漠だ」

「ハッ、昔も今も大差ねぇな。それで、どんな町に落ちてたんだ?」


 彼の口調は普段通りだが、どこか自嘲気味な笑いが含まれていた。


「砂漠だ」

「……なんの冗談だ」

「あの子を見つけたのは、なにもない砂漠だった。両親もなく、捨てられたように置かれていたのだ」

「(どういうことだ? 砂漠に子供を捨てる……なくもない話だが――)」

「脇道に逸れるのはこれくらいにしよう。本題だ、お前は何をしにきた。この場で俺を殺すつもりか」

「……アジトの場所を吐け」

「俺は盗賊ギルドの――部下を守る為に来た。自身の保身が目当てなら、お前の前に来るはずもない」

「アジトの場所さえ分かれば、焦土に変えることができる。俺の能力については、お前がよく知っているだろ?」


 かつて焦土師(ファイアースターター)と謳われたオキビは、ベイジュの命令に従うまま、多くの町を灰燼(かいじん)に帰していった。

 その町、その村、その集落、燃やされた全ての場所はまさに焼け野原であり、何一つ残らなかった――家屋(かおく)だけではなく、亡骸(なきがら)さえも。


「我々を救うとでも言うつもりか」

「仮にも一度は世話になった組織だ。今のやり方、お前を認めたわけではないが、ギルドが跡形もなく消えるというのはいい気がしない」


 ウルスはウルスなりに感傷に浸っていた節があった。

 汚い経歴と言いながらも、彼からすれば盗賊だった時の自分も歴とした一部なのだ。

 それを切り捨てる、ということができないほどに、彼は人間の連続性を理解していた。


「だが、そうなればお前が追われることになるぞ」

「こちらの要求は三つ。一つ、アジトの場所を教えろ。二つ、この戦争の決着が付くまで、隠れていろ。三つ――スタンレー、俺に手を貸せ」


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