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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
947/1603

16

「……決着、だと? なんのことだ」

「お前みたいな奴は、上から頭を押さえつけてくるような命令は嫌いだろ? 俺の読みでは、盗賊ギルドの件からは手を引くとみた。だからこそ、フレイア王にはガムラオルスの代行をすると宣言してある」


 これもまた本当であり、彼は謝罪の意と港の利用を条件に、盗賊ギルドの壊滅を無償で引き受けた。

 この一件を解決したところで火の国が同盟に戻るとは限らない為、彼としては本国への帰還に主眼を置いてのものだろう。


「……王は俺をアテにしていないということか」

「そうなるな。というよりも、そう感じられるように言いくるめたんだがな、この俺が!」


 この一言を聞いて、ガムラオルスは内心で驚いていた。

 少し前であれば、憤りや反抗心を覚えていたことだろう。しかし、今の彼は異様に静かで、何かを感じることはなかった。


「(くだらない挑発だな……これで俺のやる気を出させようとしているなら、ご苦労なことだ)」


 堕落しつつあった彼は、もはやかつてのように情熱を(たぎ)らせるような性質ではなくなっていた。


「関係ないな」

「……」


 善大王はフィアと目を合わせた後、がっくりと肩を落とした。


「ミネアには悪いが、俺も王様だ。呑気に成長を見守ってやる暇はない」

「フン」

「えっとだな、そこのスケープとやら。こいつは稼ぐ気がないみたいだし、お前が代わりに稼ぐことをおすすめするぞ」


 急に話を振られ、彼女は驚き、焦り、混乱した。


「えっ、何でですか?」

「そりゃ、お前くらいしか払えないし、稼げないだろ?」

「……は、はい」

「払う必要なんてない」ガムラオルスは言う。

「まぁ、お前はな。ただ、スケープさん? の方はそういう風にいかないんだよ。言っちゃ悪いが、この男についていったら火の国には戻れないぞ?」


 正論だったが、スケープは未だに混乱している為、わけの分からないままに頷くだけだった。


「それだと不都合じゃないのか? 国を監視できなくなるぞ」


 さりげない一言だったが、明らかに奇妙な単語だった為、鈍い彼女でもすぐに気付いた。


「えっ」

「まぁお前さん……というか、手を引いている奴が何を考えているかは分からないが、今のところは支障がなさそうだしな」


 この手を引いている、という発言でガムラオルスも気付いた。


「まさかお前、奴を知っているのか?」

「そっちのお嬢さんは忘れているみたいだけど、昔に会ったことがあるんだよ。ま、気のせいかもしれないし、あとで国に売れると思って放置していたが」


 善大王とフィアは、ガムラオルスと同じくらいに彼女の正体を知っていた。

 かつて、婚礼の試練として行われた窃盗犯との戦い。その際、彼女が貴族と融合していたことも、彼女がスタンレーに変わったことも彼は見ていた。

 とはいえ、国に売れるかもしれない、というのはこの場で考えた理由でしかない。少女にしか興味のない彼は、間の抜けた話だがすっかり忘れていたのだ。


 思い出したのはフィアの能力によって。彼女は夜の世界を見て、そのあまりのエグさによって中断させたが、何も見えなかったわけではなかった。

 (さかのぼ)った光景の中に、彼女が大好きな善大王が写っていた時点で、彼女の記憶には強く残った。

 それを見通したことで、彼は全ての記憶を取り戻したのだ。


「まぁ、軍資金を返さないようなら、俺がお前を売ることになるが――その時は自業自得ということで納得してくれ」


 それだけ言うと、彼はフィアの手を引き、店の外に出て行った。

 その場に残された二人の男女は、沈黙したまま机を見つめ、この後にどうするべきかを考え始めた。


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