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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
944/1603

13f

 ――宿屋にて……。


「あの男はなんだ、何様で俺に説教を――」

「その話はもう何度も聞きましたって」

「……お前は黙って聞いていれば良い」

「酔ってるんですか?」

「酔ってない!」

「酔ってる人はみんなそう言うんですよ。はぁ、酔っ払いの妄言聞くのも疲れますよ」


 口では言いながらも、実のところ彼女は気にも留めていなかった。

 夜の世界に生きてきた彼女からすれば、これはよくあることでしかない。

 ただし、相手に関しては事情が違う。いつもは客相手だったが、今は格下の相手、故に適当にあしらえる快適さを彼女は感じていたのだ。


「なら飲みに行くぞ」

「また飲むんですか?」

「酔ってないから大丈夫だ」

「後悔しても知りませんよ」


 そうして二人はまたもや同じ店に向かおうとしたのだが、途中でガムラオルスはウルスのことを思い出し、遭遇した際のばつの悪さを考えた。


「……別の店だ」

「まぁ、そっちの方がいいと思いますけどね」


 店の質が悪いことを彼女はよく理解しており、可能であればよそのほうがいい、という意味でそう言った。

 ……そうは言いながらも、彼女はそんな店に入り浸っている彼の滑稽(こっけい)さを思い出し、内心で吹き出していた。


 比較的間口(まぐち)の広い、大衆食堂のような場所に入った。酒はどこでも飲める、という彼女の(げん)によって言いくるめられたのだ。

 今のスケープは若干の空腹感を抱いていた。


 店に入った二人は適当な席を見繕い、酒や食事を注文した。酒はガムラオルスが、スケープは食事といった具合にちょうど線が引かれている。

 明らかに無謀なボトル注文だったが、超ローペースの彼を支えんばかりに、スケープが飲み進めていく。

 そうして一人分の食事が運ばれてきた頃、彼女は目の前の相手に遠慮することもなく食べ始めた。これは上下関係の余裕というよりも、単純に彼女の気遣いの問題だった。


「お前は随分飲むな、吐いてるのか?」

「まさか、ちゃんと飲めるように手を打ってるんですよ。あなたみたいに酒だけ流し込んでご飯を食べないと、すーぐに酔っ払うんですよ」

「……そうなのか」


 普通に感心したらしく、とはいえ彼女の食事を要求することもできず、黙って美味しくもない飲料に口を付けた。


「割と美味しいね」少女は言う。

「割とって言うな。いや、まぁ別にいいんだがな」


 食堂の中でも一層目立つ、子供と男の声が二人の耳に入った。

 大衆食堂であれば子供もいるだろう、と思うかも知れないが、この街は一般的には歓楽街ということになっている。

 見渡せば、その目的で停留している男達ばかりであり、美形の男や可憐な少女というのは珍しい組み合わせだった。


「……! ライト、誰かに見られてる」

「考えすぎじゃないのか? お前、すぐ警戒するけどな、そんなにヤバイ連中なんてそうそう――」


 少女の視線の先を追った男は、驚いたような顔をした後、苦笑いを浮かべた。


「おいおい、できれば遭遇しませんでした、で押し通したかったんだがな」

「ライト、そんなこと言ったらミネアに良くないよ」

「……ミネア?」ガムラオルスは明確に反応した。


 その時点で三人は認識を同じくした。


「ああ、いつかの善大王さんと天の巫女さんですね」

「知っているのか?」


 スケープも気付いたらしく、これでようやく四人が本当の意味で対面することになった。


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