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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
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10j

「族長、その娘と話しがあります」

「エルズと?」


 夜分も夜分、今後の展望について語り始めていた二人の前に、いつかの看守の男が現れた。

 もちろん、入り口の鈴を鳴らした後である為、いきなりの踏み込みというわけではない。


「一対一で話すってこと?」


 看守は何も言わず、顎で外を差した。


「……なるほどね。分かったわ」

「エルズが行くなら、私も!」

「族長はこちらでお待ちを」

「ティア、大丈夫だから。話したいっていうなら、それに答えなきゃ。対話を放棄したら、受け入れてくれるものも受け入れてもらえなくなるよ」


 ここで重要なのは、信頼を勝ち取ること。

 ティアを連れて行けば身の安全は確実となるが、同時に臆病者となり、また疑心を見せることになる。

 身内として一族に手を貸し、その上指揮系統を乗っ取ろうというのであれば、ここで逃げの手は打てない。


「なるべく早く戻ってくるから、ティアは待ってて」

「う、うん」


 そう言った後、やはり心配になったのか「あんまり乱暴なことはしないでね」と念を押した。

 これに対しては頷きで答え、エルズの手を引いてテントの外に出て行った。


 闇夜に包まれた里の中、看守の男は入り口に立てかけていた自前の松明(たいまつ)を手に取り、歩みを進めた。

 二人が進む間も、会話はなにも行われることはなく、エルズもまた何かを聞き出そうとはしなかった。


 わかり切っていたのだ。ただの看守が個人的な用件で会いに来た、ということはあり得ないと。

 そして、エルズを孤立させたのはティアの加護を防ぐ為であると。


「(十中八九、袋叩きってところね。死なない程度の制裁で受け入れられるなら、それはそれでいいけど――もしも殺す気になってたら)」


 彼女が反省している、と公言したのその場限りの取り繕いではなく、本心であった。

 だからこそ、多少の制裁であれば受け入れる覚悟を持っていた。そのボーダーラインが生死。死亡してしまえばティアを助けられない以上、ここは譲れない。

 そして、もし相手がその線を越えていこうとすれば、彼女は手段を選ばない。あの場で後々の策を考え、語り合ったことも、最終的に自分が組み込まれると予見してのものだったのだ。


 私刑の後に受け入れられるならば、それが最善。もしそれがなされなければ、彼女は神器の力を使い、この場を収める気でいた。


「連れてきました」と看守。

「族長は」

「テントで待っていてもらっています」


 松明を手に持ち、待っていた者達の数は六人ほどの少数だった。

 ただ、少数であることは戦力的な不足を生み出し得ない。ただ一人でさえ、地上に往けば一騎当千の猛者になりかねない者達である。

 しかし、その者達の年齢が明らかに低く、年長者などが綺麗に除外されているという奇妙な光景であった。


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