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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
913/1603

6f

「――ということだ。ガムラオルス、お前の提案……呑もう」

「ハッ」

「……だが、一つだけ聞いておきたいことがある」


 ガムラオルスは黙って王の顔を見つめ、確認内容を待った。。


「本当に、壊滅できるのか」

「ああ」

「……こちらの意図を理解できているのか、改めて確認させてもらう。こちらの要求は、盗賊ギルドの壊滅――ボスもそうだが、その組織構造を完全に破壊できるのか?」


 無条件で受け入れてもいい人材にもかかわらず、王は条件を厳しくした。

 ただ、これは厳しいというより、彼の提案をそのままに適用したといってもいい。ギルドの壊滅と大言壮語を吐きながら、打撃を与える程度では虚仮威(こけおど)しもいいところである。


「……男に二言はない。やって見せよう、盗賊潰し」

「ほう、良い威勢だ。では、成果を期待しているぞ」


 彼は頭を下げた後、謁見の間を後にした。

 そんな彼に続くのはスケープとミネア――そして、その場で許しを得たヴェルギンだった。


「あんた、本気で盗賊を潰しきるつもり?」

「ああ」

「できると思うの? 盗賊は一般人に紛れていることもあるし、ボスの居場所なんて王家でも掴めていないのよ」

「まったくじゃ、王もそうじゃが――オヌシもあのようなできもしないことを言うものではない」


 師の登場に驚いたのはミネアだけであり、風の二人は落ち着いた様子である。


「アテがないわけでもない。ボスがいるかどうかはともかくとし、連中の中核とも言える人間には繋がる」

「中核……じゃと」


 ガムラオルスはスケープを一瞥した後、真正面に向き直ってから歩みを早めた。

 彼は確信していたのだ。かつて決死の攻撃で痛み分けに持ち込んだ男――スタンレーが盗賊ギルド内で上位に位置する人間だと。

 (おご)りという面もあるが、事実として《選ばれし三柱(トリニティア)》と互角、もしくはそれ以上の実力を有する人間など、世界全体で見ても十に満たないだろう。

 そのような者が組する集団の下位であるはずがない。確実に上位、それもボスに連なる人間、中枢部を知る存在である。


 とはいえ、これは後付けのような思考。あの場において、確信をもって啖呵(たんか)を吐いたわけではない。

 後からでも大言壮語の帳尻を合わせる、という覚悟は持っていたようだが。


「あんたは火の国に付くってことよね?」

「ああ、そうなるな」

「……結果はどうであれ、あたしは歓迎するわ。あんたの実力はあたしもよく理解しているつもり」

「そうか」


 ミネアからすれば、彼でさえまだ信頼できる人間に含まれているのだ。

 なにせ、この国の《選ばれし三柱(トリニティア)》は二人とも彼女の味方ではないのだ。その点で言えば、ガムラオルスは自分に協力してくれるかもしれない、という期待を抱かせるだけの要素を持ち合わせていた。

 かつてのような気取りも消え、ほどほどに立場を弁えたともなれば、彼に明確な弱点はないのだ。

 強いて言えば、いつか彼女がカーディナルを疑った際、それを信じなかったことくらいだろうか――それについても、善大王との一件で反省していることから、彼を責める理由にはならないだろう。


 ただ、彼女はすっかり忘れていた。

 自分の寿命に限りがあるのと同じように、ティアの時間も削られていることを。彼女から、大切な人と居られる時間を奪っていることを。



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