表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
91/1603

9

「……また、負けか」


 起き上がった善大王が第一に見たのは、ティアの裸体だった。

 少女の裸体は善大王にとって好物ではあるのだが、今はそれ以上に気になることが存在していた。

 斬撃によって浴びせたはずの傷がまったくない。傷が治療された痕跡すら残っていなかった。


「み、見ないで! ライトは見ないで!」


 フィアがすぐに善大王の目を隠すが、それに対してまったく抵抗することもなく受け入れ、問いを投げかける。


「フィアが治したのか?」

「う、うん。そうよ」

「天属性の術なら、できるかもしれないな。なるほどな」


 善大王は納得し、ティアの着替えが終わってから目隠しを取られた。


「善大王さん、今回はかなり強かったね」

「いや、それでも負けは負けだ」


 最後の一撃を防ぎきれていれば勝てていた、という自覚があるだけに、善大王は相当落ち込んでいた。

 もちろん、彼ほどの男がそれを悟られるような態度を取るはずがなく、外見上は普通に見える。


「ちょっとライト! 使わないって約束したのに、何で使おうとしたのよ!」


 入れ替わるようにフィアが善大王の前に立った。


「いや、これはお前の為を思ってだな……あと、国の為」

「私情で使わないでって注意したはずよ! それを忘れないで」


 神から力を与えられているのに、それを自由に使えないとは──と、善大王は呆れ気味に考えていた。


「ま、とりあえず用事も済んだし……帰るか」

「ええ、そうね」

「えっ、もう帰っちゃうの?」


 呼び止めようとしているティアに対し、善大王はやさしく笑う。


「ああ、長居しすぎたからな。これ以上はお世話になるのも気が引ける」


 そういうとティアも納得し、何度か頷いた後に、善大王の手を引いた。


「善大王さん! またいつでも挑戦してくれてもいいからね」

「おう、何度でも挑みに来るぞ」


 そうして、三人は山を降りることになった。

 数日にも及ぶ移動とはいえ、ティアについては慣れているので問題ない。善大王ももちろん、文句を言うことはなかった。

 ただ……。


「やだ! ベッドがいいの!」

「文句言うな! ってかここくるときも散々文句言ってただろ!」

「文句言っても不満が消えるわけじゃないの!」


 言い合う二人をみて、ティアは噴出した。


「あはは! 二人とも面白い。でも、いいなぁ……私もガムランとこんな感じに仲良く喧嘩したいなぁ」

「いや、喧嘩はいいものじゃないぞ。それに、フィアに関してはただのわがままだ」

「いーいーえ! 正統な要求よ!」

「この引きこもり姫が!」

「引きこもりは私のせいじゃない! お父様が閉じ込めていたのが原因だから!」

「揚げ足取るんじゃない!」


 結局、その日は善大王の上に乗っかることでベッド代わりとし、妥協されることとなった。

 翌日、ようやく山の麓に到着し、ティアは足を止める。


「じゃ、私はここまでだから」

「おう、ありがとな。まぁ、そのうちくるよ」

「その、ガムラオルスと、仲良くなれるといいわね」


 フィアは不恰好に、ティアを励ますような言葉を掛けた。相変わらずコミュニケーション能力は低い。

 ただ、そんなフィアの言葉が嬉しかったのか、ティアは抱きついた。


「うんっ! ありがと。フィアも頑張ってね」

「え、ええ! 頑張る!」


 二人の少女の微笑ましい光景を眺めた後、善大王はフィアの手を握って歩き出した。


「よし、とりあえずは水の国にでも行くか」

「うん。向こうならちゃんとしたベッドもありそうだし」


 善大王は乾いた笑いを浮かべ、水の国への道を歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ