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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
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 炎が掻き消えたかと思うと、後方で立っていたキリクが地面に倒れ込んだ。


「なるほど、初めから私目当てではなかったと」

「あんたは得体が知れないわ……だから、不意打ちだって成功する見込みがなかった。なら、警戒のない方を討つだけよ」


 これに関してはウルスも惑わされたらしく、予測外の現象に(おどろ)きを見せていた。


「確かに、これで三対一ですね。最善の手でしょう――私が、好きな場所に移動できる駒でなければ」


 瞬間移動、という単語がエルズの脳裏を過ぎり、咄嗟に黒ローブに対しても神器を発動させようとした。

 しかし、これは当初の読み通りというべきか、対象を捉えることもできずに空振りとなる。

 そもそも、《邪魂面》というのは対象を定めてしまえば、距離はさほど大きな問題ではないのだ。目視が必要という制約でさえ、そこにはない。

 にもかかわらず、彼女にそれを行うことはできなかった。対象を自己認識の範疇に加え、その上で精神干渉を行う――これこそが仮面の手順(プロセス)なのだが、エルズはそれを視覚に頼っていた。

 神器とは発展性のある道具であり、使い方を理解できなければその力を発揮することはできない。

 如何に神器の効果を知り、その限りを調べるか。それこそが《選ばれし三柱(トリニティア)》にとって、最も有効な強化手段である。

 実際、手助けを得ていたとはいえ、ガムラオルスもこうした神器の理解を経て飛行能力を獲得した。


「強すぎる力の代償ですよ。あなたの神器はあまりにも簡単に、それであって十分な成果を示してきました。だからこそ、その先をみようともしなかった――詰み(チェックメイト)です」


 好きな場所に移動ができる――それは事実を述べたわけではなく、この場を盤上にたとえての一声だった。


「……どこに」

「はい、ここに」


 瞬間、白は同じ場所に出現した。一度は確かに消え、その魔力を含めた全ての気配が断たれていたにもかかわらず。


「……やはり、奴の能力は――」

「おっと、ウルスさん、それ以上は無粋というものですよ。それを口にしようものなら、私はあなたを殺さなくてはなりません」

「はっ、まるで今はその気がないみたいに聞こえるぞ」

「組織は私に命令を下しましたよ、あなた達三人を殺せと――ですが、それに従うのは望むところではない」


 切断者の負ったダメージは想像以上に大きく、これほどまでの時間をかけても、未だに立ち上がるに足るだけの体力は戻っていなかった。

 だが、彼の眼光だけは鋭く、そして追跡するように黒ローブを捉えている。


「さて、そろそろですかね」

「……なんのことだ」

「これだけの《選ばれし三柱(トリニティア)》が、こうして一堂に(かい)したわけです。多生鼻の利く人であれば、これに気付いていることでしょう」


 そう言いながら、白は口許以外を隠したままに、空を見上げた。

 まるで思い当たる節のなかったウルスだが、彼につられるようにそれ(・・)を目視した瞬間、一つの可能性を感じ取った。


「まさか……渡り鳥か?」


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