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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
864/1603

3s

 抵抗を諦めたかのように、男は両手をだらんと垂らした。


「……《選ばれし三柱(トリニティア)》二人に加わっても、それについていけるだけの一般人(・・・)――これは興味深いですね」

「い、一般人――」クオークは落ち込んだ。

「クセの強い俺らには、こういうツッコミ役だか天然がいた方がちょうどいいんだよ」

「それは確かに言えてますね。こちらも癖の強い人が多いんですが、私が仲裁(つっこみ)をしなければならない状況になるんですよ」


 四方を炎で囲まれながらも、黒ローブは依然として落ち着いた様子で話していた。


「冗談話すのも悪くねぇが――さっさと本題に移ってくれねぇか? お前が無抵抗で話してくれるっていうなら、この炎も消していい」

「……お気遣い感謝します。ですが、それは小さな親切ですよ」


 比較的穏やかな言い方だが、その真意は大きなお世話(・・・・・・)ということだった。

 木材の床が炎によって弾け、パチンという音と共に赫々(かくかく)とした光が散った。

 吹き上がる轟音の中で、密かに聞こえたその音を捉えていたのは黒ローブの男――白だけだった。


 首を傾げるクオークとは対照的に、ウルスは何かを察知したかのように炎の壁を解除した。

 次の瞬間、甲高く、鳥の囀りの如く音が襲い、頑強な石壁が一撃で粉砕――貫き穿(うが)たれた。


 石礫(いしつぶて)が部屋の中に散り、煙という隠れ(みの)を最大限に活かしながら、無差別に襲いかかる。

 両手で頭部を抑えるエルズを護るように、クオークは目や口をぎゅっと締めながら仁王立ちをした。

 残る一人のウルスはというと、その発射点である穿孔(せんこう)部に向かって炎の刃を放っていた。


 正面から来た礫はこの熱と衝撃に耐えきれず、砕けるか弾き飛ばされるかをし、掃除烏の面々に当たる石の数は少数となった。

 しかし、防御の為にウルスが護身を解除したわけではない。この刃は、その役割の通りに攻撃だった。


 (すす)の混じった煙を引き裂きながら、断頭の刃を思わせる炎は何かを捉えた。

 しかし、衝突と同時に聞こえるはずのない研磨音が発せられ、続くように炎の砕ける音が部屋中に鳴り響いた。


 音の、衝撃の、炎の断片によって、煙は引き裂かれ、灰白色(かいはくしょく)の幕は取り去られた。


「無事ですか?」白は言う。

「……それは私の台詞だ」


 煙の幕が降り、そして開けられるまでの間に、事態は大きく変化していた。

 螺旋の刃を纏わせた重槍を持つ黒マント。そして、橙色の力場から解き放たれた黒ローブ。


「一歩だけ……たった一歩だけど、動かれています」クオークは震え声で言う。

「んなもん、みりゃ分かんだろ」

「そ、そうなんですけど……」


 驚愕する二人とは対照的に、白は毅然(きぜん)と――飄々としていた。


「さて、話を戻しましょうか。私達はあなた方と戦いたい。ですが、ここで戦うと店主の迷惑に……いえ、もうなっていますが――迷惑になりますので外に行きませんか?」

「……組織の邪魔者を排除するなら、正々堂々の勝負なんか必要ねぇと思うが」

「いえ、正々堂々が私の主義でして。……こちらの相棒も、それには同意の上です。安心してください、不意打ちはこの一回だけですので」


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