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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
860/1603

19v

 ――ヴォーダン宅にて……。


「(ありゃーミネア様は本当に落ち込んでるみたいですねー)」


 これっぽっちも他人に興味がないスケープは、まさに他人事といった様子で思考し、「それじゃ、ワタシは失礼しますねー」と小声で言った。

 これは彼女の想定通りか、落ち込んでいるミネアの耳には届いておらず、勝手ではあったが気付かれずに外に出ることができた。


 暴力を振るわれた直後だというのに、彼女にはその感触が乏しかった。痛みはあれど、それがただ殴られたという事実に改変されていたのだ。

 記憶を遡ることで、殴られたという事実をずいぶん前のこと、という風に感じているのだろう。とても奇妙な性質である。


「聞こえていますか?」

「……なんだ?」


 誰も居なかったはずのそこに、一人の男が立っていた。

 その人物はスタンレー本人であり、少なくとも幻術の類ではなく、彼女にとっては実体も同然だった。


「師匠の神器がどんな効果なのか、ようやく分かりました」

「……術の封印だろう?」


 最初の応答には呼ばれたことへの憤りが含まれてたが、今度のそれはいまさらなことを言われた呆れが表れていた。


「それはそうなんですけど――触らなくてもいいみたいです」

「なんだと? ……効果を錯覚させる為の小細工か」


 ヴェルギンは今に至るまで、幾多の戦いで敵の術を封じてきた。その際の特徴として、確実に神器で触れていたのだ。

 命を賭けた戦い、見られる場面ではない際、とっておきが必要となる戦場――そうした時の引っかけとして、事前に手間をかけていたとしても驚くには値しない。


「あの男は厄介だと思っていたが、本格的におれの天敵らしい」

「それに! 封印した術は壊さない限り、ずっと使えなくできるらしいですよ」

「……永続封印だと? それは問題だな」

「でも、たくさんの《秘術(てふだ)》を持っているなら、大丈夫じゃないですか?」


 あの戦いを目にしながら、スケープは何一つ理解できていなかった。

 明らかに格落ちの感が強かった《封魂手甲》が、術者を完全に無力化させうる性能を持っている、という事実に。


「こちらの手札は何十枚もない。全てを封じられた時点で、完全に詰みだ」


 そう、《導術》であれば取っ替え引っ替えすることで、完全な無力化を防止することができる。

 しかし、《秘術》という切り札を封じられた場合、根底から作戦が崩されることになる。

 複数持つ彼でさえダメージが大きいというのだから、純粋に《秘術》一つを必殺の域に高めた者であれば、絶望的な被害――敗北が確定するのだ。


「お前を送り込んでおいたのは、正解だったかもしれない」

「そうですか? ありがたき幸せです」

「後々の砂漠()りの際、奴を隔離できるというのは活きてくる」

「なるほど」


 明らかに理解していないと察したのか、スタンレーはその場を立ち去ろうとした。

 しかし、急な客人の到来に気付き、立ち止まる。


「……スケープ、なにをしておるんじゃ」


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