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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
854/1603

13χ

「お、お前……っ」

「あらあら、組織のボスともあろうお方が、ずいぶんな慌てようではありませんの?」


 口調こそは普段通りだが、その声色は安い挑発のような――急き立てるような、敵愾心(てきがいしん)を含めたものだった。


「水と雷が通じている程度、たしかにたいしたことではありませんの。ですが、その場合は二国と《天光(さいきょう)二人(ふたり)》が繋がったまま、ということになりますが?」

「くっ……」


 これこそが大きな抜け目。目立った被害がなければ、火の国だけが抜けたところで、憤りは小規模にして一カ所だけで済む。

 しかし、ライカという均衡(きんこう)(かなめ)、実の娘を奪われたからには――奪還作戦を行うのは当然という思考に変化するのだ。

 こうなると、火の国の契約満了による脱退は成立せず、怒りは不義(ふぎ)な行動をした者へ向けられる。卑怯者や(こす)い者ではなく、人でなしとなるのだ。


 そんな人物を組み入れた善大王。ここにも疑心が向き、全ては彼が調停できなかったことが原因、といった形で怒りの矛先が変わる。

 そうなってしまえば、火の国との連携断絶、戦争終結に意欲的な《天光の二人》封じが成立する。後にも今にも、大きなダメージを与えことになるのだ。


 これがもし、水と雷の同盟が維持した状態で、善大王とフィアが加わっていれば――攻略戦直後に追撃の如く、本土強襲が組まれたことだろう。

 ミネアという高火力砲を欠いた状態であっても、二カ国分の戦力、そして対魔物戦最強の《皇》、《天の星》が居れば作戦決行は現実の域だ。


「――ライカちゃんの話に戻しますわ」


 気分を切り替えたように、ライムの顔には余裕のある笑みが戻った。


「ライカちゃん誘拐は、わたくしの独断ではありませんの」

「何を根拠に――お前は信用できねぇ」


 各地の色物(イロモノ)を掌握し、その頂点に立っても不足を見せないだけはあり、黒は強気な態度を崩さなかった。

 ただ、ライムはただの感情で動いているわけでもないらしく、この態度に関しては不問とばかりに返答を行った。


「ダークメア様の意図で動いていますのよ。組織でも、闇の国でもなく」

「……親父が?」

「白様も詳細は知らない、とのことですわ。ですが――あの様子だと、思い当たる節があるといったところですわね」

「白が? お前に聞いたのか?」

「ええ、あちらは収容場所には見当が付いているようで。それでも、侵入が不可能と観念してくれましたわ」


 獰猛な表情が、その凶悪さを一層増した。

 彼は奇妙な動きをするライムを嫌うが、それは親を同じくする白であっても例外ではない。

 彼もまた、予期せぬ動きをすることが多い。いつかディードと協力した時もそうであり、黒からすれば厄介者であった。

 とはいえ、二人が目的を同じくしているという自覚がある上、彼の行動の多くがダークメアの利となるだけに、その行動の多くを見逃している節があった。


 だが、理解していても気が立つのは抑えられない。

 なにより、彼は白がダークメアの密命で動いている、という認識をしているのだ。片方だけが特別視されていると感じれば、()くのは当然のことである。


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