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大空のフィア  作者: マッチポンプ
中編 少女と皇と超越者
85/1603

3

「少年、災難だったな」


 善大王が姿を表した途端、ガムラオルスは威嚇するような気配を身にまとう。


「何故お前がここにいる」

「なに、ティアに用事があってな。だが、まぁ……その用事は後にしよう」


 少女のことを一番に考える善大王だけあり、傷心少女に再戦を申しつけるような真似はしない。


「あなた最低! ティアはあなたとデートしたがってたのに」


 突如として割り込んできたフィアに、善大王は頭を抱える。


「この子は……?」


 さすがに見知らない相手の登場に困惑したらしく、ガムラオルスは年相応に問いを投げかけてきた。


「あれだ、世間知らずの引きこもり姫だ」

「なによそれ! 世間知らずで引きこもり……だけど」


 否定するところが一つもなく、フィアはいきり立っていたアホ毛を萎えさせた。


「ティアの……友達? のような子だ」と善大王。

「なるほど。では、歓迎した方がいいですね」


 ガムラオルスは、突如として口調を変えてきた。

 ただ、それは習慣として身についているというより、子供が大人の真似をしているかのような、とってつけられたようなものだった。


「デートデートデートデート! もぉー!」


 なにやら怒っているらしいフィアの頭に手を置き、善大王は話を進める。


「勝つのはいい。男のプライドがあるからな。でも、なんでデートしてやらなかったんだ? 可愛そうだろ」

「……ティアとは、そういう関係ではないので」


 その様子を見て、善大王は察した。


「(なるほど、年相応にこっ恥ずかしいんだな。若い若い)」


 乙女心があるのと同じように、若い男にもそうした感情があるのだ。割り切れない想い、年を重ねて擦り切れた善大王には残っていない恥だ。


「とりあえず、あれだ。ティアが帰ってくるまで宿を貸してはくれないか?」

「宿……そのようなものは」

「女の子は、大好きって言ってほしいものなの! だから――」

「とりあえず、こいつを宥めたいからさ。というか、みっともないところをあまり見せたくない」

「わかり……ました」


 善大王は善大王なりに困っている、ということを理解したらしく、ガムラオルスは自宅を貸し出すことにした。


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