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「少年、災難だったな」
善大王が姿を表した途端、ガムラオルスは威嚇するような気配を身にまとう。
「何故お前がここにいる」
「なに、ティアに用事があってな。だが、まぁ……その用事は後にしよう」
少女のことを一番に考える善大王だけあり、傷心少女に再戦を申しつけるような真似はしない。
「あなた最低! ティアはあなたとデートしたがってたのに」
突如として割り込んできたフィアに、善大王は頭を抱える。
「この子は……?」
さすがに見知らない相手の登場に困惑したらしく、ガムラオルスは年相応に問いを投げかけてきた。
「あれだ、世間知らずの引きこもり姫だ」
「なによそれ! 世間知らずで引きこもり……だけど」
否定するところが一つもなく、フィアはいきり立っていたアホ毛を萎えさせた。
「ティアの……友達? のような子だ」と善大王。
「なるほど。では、歓迎した方がいいですね」
ガムラオルスは、突如として口調を変えてきた。
ただ、それは習慣として身についているというより、子供が大人の真似をしているかのような、とってつけられたようなものだった。
「デートデートデートデート! もぉー!」
なにやら怒っているらしいフィアの頭に手を置き、善大王は話を進める。
「勝つのはいい。男のプライドがあるからな。でも、なんでデートしてやらなかったんだ? 可愛そうだろ」
「……ティアとは、そういう関係ではないので」
その様子を見て、善大王は察した。
「(なるほど、年相応にこっ恥ずかしいんだな。若い若い)」
乙女心があるのと同じように、若い男にもそうした感情があるのだ。割り切れない想い、年を重ねて擦り切れた善大王には残っていない恥だ。
「とりあえず、あれだ。ティアが帰ってくるまで宿を貸してはくれないか?」
「宿……そのようなものは」
「女の子は、大好きって言ってほしいものなの! だから――」
「とりあえず、こいつを宥めたいからさ。というか、みっともないところをあまり見せたくない」
「わかり……ました」
善大王は善大王なりに困っている、ということを理解したらしく、ガムラオルスは自宅を貸し出すことにした。




