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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
826/1603

3

「ライト、あんな安請け合いしてよかったの?」

「馬鹿言え。あれは俺が対処しなきゃならない問題だ。それに、攻め落とすんじゃなければ三国分でどうにかなる」


 飽くまでも打算した上での返答だった、と彼は言っているが、フィアはというと別の部分が気になっていた。


「……火の国と雷の国は、協力してくれないかな」

「無理だろうな。火の国はあの調子だし、雷の国は裏切られたって思ってるだろうな――また裏切られると警戒するかもしれないが、それよりも切り捨てられる恐怖が強いだろう」

「切り捨てたりしないよ!」

「ラグーンには他国(おれたち)に報復する手段がないんだよ。だから、もし作戦の最中に俺達が見限ったとしても、それに文句さえつけられない」


 利害関係を元とした、最悪の状況を想定した内容。人間が醜悪であり、平気で裏切り合うことを知っているからこそ、彼はそう断じていた。

 人間が美しく醜悪であり、人はどちらかに極端ではない――それを理解している彼であっても、大局を語らる本音の部分では奇麗事は言わない。


「……そんなにみんな、悪い人じゃないと思うの」

「世の中はそういうもんなんだよ。誰が悪いとかじゃない、そうするのが当たり前で、誰もそれを咎めたりしちゃいけない。だが、フィアは今のままで大丈夫だ。面倒で汚い部分は、大人が処理するところだ」


 シナヴァリアと善大王の差、それは人間をどの程度理解しているか、という部分だった。

 彼は人を知り尽くしている。だからこそ、失望することはない。

 人の感情が分かるからこそ、当たりの悪いことは分かった上でし、それが大きな人災を起こしうる場合には丁寧に対処する。

 冷血宰相が怠った対応でさえ、彼ならば行えていたことだろう。


 ただ、フィアに対してそれを押しつけない辺りは、彼も理想や奇麗事の重要性を理解しているということなのだろう。

 必要なのは知ること。いつか理想だけではどうにもならなくなった時、善大王の語る当たり前(・・・・)を活用することになる。


 だが、彼にしても読めないことはあった。

 それは、彼のうかがい知れない内に、ケースト大陸がひどい状態に陥っているということだった。


「じゃあ、ティアのところに行くのは?」

「それは後回しだな。さっきも言っただろ? シナヴァリアを連れてきた方が、いろいろと勝手がいいかもしれない」

「ティアが一緒にいた方が安心なのに」

「はは、それもそうだ。だが、そうしたらフィアと二人きりになれないだろ?」


 どんな状態になっても、ここだけは変わらなかった。

 彼から好意を向けられてしまえば、さすがの神姫でさえ、骨抜きの色ボケ巫女でしかない。


「(まぁ、本音は向こうの様子を見に行きたい、ってところが大きいんだがな。任せっぱなしにしてしばらく経ったしな……)」


 宰相に対して強い信頼感を持つ善大王だが、自分の不在がもたらす影響を無視してはいなかった。

 神皇派が何かをし出すのではないか、という脅威は彼の中にも存在していたのだ。

 ただ、それを込みにしてもまだしばらくは大丈夫だと考えている。

 シナヴァリアが急進的な方法で協定締結を押し進める、という展開については、彼の計算の外の出来事であった。


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