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ライカの進撃は驚異的だった。既に二度も目にしたからか、音速の砲撃を瞬時に避けながら、投擲のように自身を前方に向かって大きく押し進めた。
ただの二回とはいえ、少女からすれば十分な情報量だった。
彼女の観測能力が突出していることは明らかだが、こと電気系統の相手であるならば、ライカの観察能力は桁違いのものとなる。
そもそも、分析に必要なのは知識と洞察力である。知識がなければ、いくら情報を与えられても理解できず、ただの無駄骨に終わるのだ。
逆に、洞察力が乏しく、得られる数値が少なければ知識を活用しきることはできない。
だが、電撃姫にその心配はない。相手の砲台の大部分は、彼女の知識の庭の範疇にあるのだ。
その予兆が磁力に関わっていると分かった時点で、彼女はその力から全容を逆算してみせる。
故に、今の彼女は軽い未来予知を行っているに等しく、だからこそ攻めた進行方法さえも実行できた。
……無論、ライカがそうした仕組みで読みを行っているわけではない。無意識、感覚でそれらを行ったのだ。
具体性を欠いた状態であっても、自分が納得すれば疑わずに行動できる。それもまた、子供としての純粋さが強みとなっているのだ。
「(だいたい思った通りだし。なら、これでアタシの勝ちだし!)」
白き槍の射程内の寸前で、彼女は《魔導式》の構築を開始した。
あちらの砲撃は充電段階。そして、人間ではないからこそ、回避や防御という切り替えも行えない。
完成と同時に、彼女の足が有効射程内に突入した。
「《雷ノ十四番・白雷》」
白雷が轟き、音速に肉薄する早さで対象を貫く。
「よゆーだし」
勝ちを確信し、油断しきったライカだが、目標物の残骸が気になったらしくその場に止まった。
圧倒的な破壊がもたらした黒煙の中、圧縮された突風の如く音が鳴り響くのが聞こえた。
攻撃は確かに直撃し、巫女としての威力拡張も確かに機能していた。
しかし、彼女は読みを見誤った。十分に破壊力を発揮できる距離であったにもかかわらず、砲台は未だ沈黙せずに充電を続けている。
――いや、むしろ充電は完了し、砲撃段階に移っていた。
「(まっず――)」
両者間の距離が縮んだからか、今回の前兆は別の形で伝わることとなった。
『Five,Four,Three,Two,One...FIRE!』
未知の言語が発せられた後、音速の砲弾は黒煙を引き裂きながら、敵対者に向かって放たれた。




