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――カルテミナ大陸にて……。
「どーにか上陸はできたけど……これがホントーに船なわけ?」
磁力の力によってどうにか上陸に成功したライカだったのだが、いざ辿りついた場所が想像と違っただけに、困惑の大きさは凄まじいものとなっていた。
「地面は土だし……それに、帆も見当たんねーし。こんなんが動くなんて、シアンも馬鹿なこといってんじゃん!」
のんきに笑い出した電撃姫だが、すぐに問題点に気付く。
「……で、どこに大砲があるし」
そこは大陸と目されるだけはあり、木々が生い茂り、見晴らしの良さは最悪といっても過言ではなかった。
到着すれば発見できる、と高を括っていたライカからするに、これはなかなかに困った状況である。
「ラグーンとも連絡とれねーし、シアンからはなるべく術を使うなって言われたし……これどーすりゃいいのかわかんねーじゃん」
導力を検知する宝具があるのではないか、という推測については、かつてのシアンの調べによって確証が取れている。
脱出の際に発動が許されたことでさえ、それに続く爆発現象が目くらましになるという打算によるものであり、以降も続けて使っていいということにはならないのだ。
天下無双の電撃姫とはいえ、木造大型船を沈めるほどの機銃から狙い撃ちを受けるようなことになれば、ただではすまないだろう。
つまりは……。
「見つけるまではオンミツ行動――って! そんなのメンドーだし!」
味方さえ焼き払う彼女に、作戦行動は無理があった。
あの鉄の棺桶の如き突撃魚に乗せたこともまた、彼女を型に嵌めるという目的が大きく存在していたのだ。
だが、解放されてしまえば最後、彼女は好き勝手に暴れ回る。
――《雷火の電撃姫》の名に偽りはない。
戒めから解き放たれた途端、彼女は《魔導式》を展開し始め、使い慣れた術を高速で完成させた。
「《雷ノ十四番・白雷》」
白き電撃の槍が木々を薙ぎ払い、周囲に轟音を撒き散らす。
その後も彼女は術を乱射し、己が進む道を拓き、焦土の軌道を敷いた。
案の定と言うべきか、この暴虐を察知した闇の国の海兵が集まってくるが、彼女は木々にするのと同じように敵兵をも薙ぎ払った。
《星》が無制限に暴れ回った際の例としては、まさに最適な光景だった。
この姿こそが、破格の力を持つ少女達が軍に匹敵すると謳われる所以である。
「シアンの奴もビビり過ぎだし。こんなのいくら来ても大したことねーじゃん」
極限まで天狗になっているライカだが、実のところ、先の奇襲がもたらした混乱に助けられていた。
あの一撃は大陸を沈めるには至らなかったものの、防御に回った術者の多くを戦闘不能に陥らせ、さらに艦内――大陸内というべきか――の指揮系統を停止させたのだ。
そしてなにより、突撃魚の攻撃によって水中を進む爆弾、船をも沈める機銃さえも無力化されている。
こうなると、ライカを止めうる手段は、たった一つに限られる。
「こんなのラクショーっしょ。三国なんてメンドーなことをしなくても――」
刹那、ライカは奇妙な磁気を感じ取り、振り返った。
捉えた光に続くように、凄まじい電撃の鉄槌が轟音を発しながら彼女へ迫る。
 




