表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
814/1603

1t

 ――突撃魚内部にて……。


『ライカ、そろそろ目標地点となります。脱出の用意を』

「……コイツらはどうすんの?」

『それは執念であり、また思念なのですよ。そこに人はいません』

「っても、コイツらは明らかに意思を持って、この船を動かしてるし! そんなヤツらをまとめて吹っ飛ばすなんて――」

『ライカ……あなたも成長したのですね』


 味方の兵を容赦なく感電させた電撃姫が、見ず知らずの思念にさえ同情を抱き、その切り捨てを是としない。

 これは感情に支配された悪手ではあるのだが、一人の父親として、ラグーン王は感動を覚えていた。


「いやさ、目覚めがわりーなって思ったわけよ。今から敵をブッ潰すって前にさ、そんなことやりたくないって思うじゃん?」

『……はい。問題なく爆破してください』


 感心して損をした、と言いたげな態度の父親に困惑しながらも、ライカは辺りを見渡した。


「アンタらも大変じゃね? こんなブッソーな船に乗せられて」

『……』


 通信機は床に置かれているが、王もまた、彼女の声を聞いていた。


「アンタらは、なんでそんなに戦いたいんだし」ライカは静かな声で問う。

『ライカ、申し訳ありません』


 父親は謝罪をするが、彼の声は届いていなかった。なにせ、受話器に耳を当てていないのだから、音が聞こえるはずもないのだ。

 船内は静寂ではなく、音に満ちあふれていた。


『ライカ、目標地点に到達しました。早急に脱出を』

「……っ、はぁーっ! よっし、アンタらにゃ恨みはねーけど、アタシも仕事があるし!」


 《魔導式》を展開しようとした瞬間、天井の蓋が急に開け放たれ、内部に海水が流れ込んできた。


「げっ……こんなポンコツだったなんて聞いてないしー!」

『ライカ!? どうしたんですか?!』


 ラグーン王の声は途中で途切れ、浸水の進んだ船の中、電撃姫は覚悟を決める。


「(ったく――海面はクッソ遠いけど、どうにかして行くしかないし!)」


 彼女の選択したのは、海水が浸水しきった段階で船の外に飛び出し、海面まで泳いで向かうという手だった。

 幸いながら、彼女は海に対してのトラウマを持ち合わせいないのだ。

 だが、不幸なことに彼女は泳法の心得がなかった。


 船内を海水が満たした瞬間、強烈な上昇水流が発生し、彼女の体が海中に投げ出された。


「ッ――」


 その勢いは突撃魚を飛び出した後も衰えることなく、彼女の体を水上めがけて運んでいく。

 そんな最中、彼女は改めて、その姿を見ることとなった。

 黒い船が大陸に向かって突撃していく様を。


 その兵器(・・)がカルテミナ大陸に到達した瞬間、凄まじい爆発が発生し、ライカはあの船の危険性を体験することとなった。


「(あんなんに入ってたら……間違いなく、死んでたし)」


 彼女がそうした考えを浮かべた頃には、ライカは海の出口へと運ばれ、海面から顔を出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ