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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
808/1603

12t

 ――旗艦、甲板にて……。


「ちょっと、なんかヤバイ船らしいんだけど」

『事前に説明したはずですが』


 通信術式の向こう側からは、呆れたような声が返ってきた。それが癪に障ったのか、ライカは体から電気を迸らせた。

 これに驚いた船員が船から落ち、かなりの騒ぎになっていたのだが、彼女の耳には届いていない。


「そんなの聞いてねーし」

『では、改めて説明します。本作戦で用いる船は《突進魚》とされる宝具です」

「……それで?」

『突進魚は……その、何故か内部に爆薬と思われるものが搭載されており――』

「ちょ、ちょっと待つし。なんで船にそんなブッソーなもんが積んであんの?」

『制作者の意図は察しかねます。海中を進むという性質から、これを起爆させる手段はないはず――その上、外に出す手段も見当たらないのですよ』


 宝具はその性質上、ミスティルフォードでは謎多き品として認識されている。

 元来の使い方が判明している物の方が珍しいという始末であり、この船でさえ本当に船なのか怪しいものである。

 だが、現実として銃器を兵装としている為、使いこなせるという自負は他国を凌駕しているようだ。


「……んで、その爆薬は抜いてあんの?」

『──それはもちろん。ライカに何かがあっては困りますからね』

「試験してないのを使わせるのは、困らないって?」


 ラグーン王は咳払いをした後、明らかに迷いを含ませた声で答えた。


『――大陸に到達した時点で船を破壊してもらい、そのまま突入していただきます』

「おい、ちょっと」

『進行方向はこちらから伝えるので、それに従って操縦してもらえれば――』

「ま、待つし! 操縦ってなんのことだし!」


 ばつが悪くなったのか、王は一方的に通信を切断した。


「……あのクソオヤジ」


 汚い言葉を吐いた直後、彼女は不意に疑問を抱いた。


「ってか、船を爆破したら帰れないんじゃね?」


 しばらく考えた後、彼女はとりあえず手頃な相手に文句を言おうと、再び会議室に向かった。

 そこではシアンが健気にも待っており、黙って部屋に入ってきたライカに会釈をした。


「少しは分かったし」

「では、ライカちゃんには破壊目標を――」

「ふざけんな! あんな船乗れっか!」

「……ですが、あの方法以外では近づけそうには」


 歌姫は困ったような顔をするが、この電撃姫が気遣いなどするはずがなかった。


「は? ならあんたが乗ればいいし。あんなの船じゃないし!」

「いえ、わたしが乗り込んでも攻め込めないので」

「……確かに、そうだけど」


 あまりに冷静な返しに、ライカは感情のやり場をうしなった。


「お父上を信じてください。きっと、大丈夫ですよ」

「ったく、他人事と思って好き勝手言って――っと、そういえばアタシはどうやって帰んの? 船を破壊しろって言われたんだけど」


 ここでようやく同じ土俵に立てた――立ってくれた、かもしれない――と感じたらしく、シアンは安堵の表情を浮かべながら、作戦の説明に移った。


「ライカちゃんには兵器の破壊後、内部の指揮官を討ち取っていただきたいのです。帰りにつていは――仕事が終わる頃には迎えの船が到着していると思います」

「……つまり、アタシが切り札ってワケな」

「はい」

「ま、トーゼンじゃん?」


 己の強大な力に酔いしれ、完全に盲目になったらしく、任された仕事量の多さにはこれっぽっちも気付いていないようだ。


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