12t
――旗艦、甲板にて……。
「ちょっと、なんかヤバイ船らしいんだけど」
『事前に説明したはずですが』
通信術式の向こう側からは、呆れたような声が返ってきた。それが癪に障ったのか、ライカは体から電気を迸らせた。
これに驚いた船員が船から落ち、かなりの騒ぎになっていたのだが、彼女の耳には届いていない。
「そんなの聞いてねーし」
『では、改めて説明します。本作戦で用いる船は《突進魚》とされる宝具です」
「……それで?」
『突進魚は……その、何故か内部に爆薬と思われるものが搭載されており――』
「ちょ、ちょっと待つし。なんで船にそんなブッソーなもんが積んであんの?」
『制作者の意図は察しかねます。海中を進むという性質から、これを起爆させる手段はないはず――その上、外に出す手段も見当たらないのですよ』
宝具はその性質上、ミスティルフォードでは謎多き品として認識されている。
元来の使い方が判明している物の方が珍しいという始末であり、この船でさえ本当に船なのか怪しいものである。
だが、現実として銃器を兵装としている為、使いこなせるという自負は他国を凌駕しているようだ。
「……んで、その爆薬は抜いてあんの?」
『──それはもちろん。ライカに何かがあっては困りますからね』
「試験してないのを使わせるのは、困らないって?」
ラグーン王は咳払いをした後、明らかに迷いを含ませた声で答えた。
『――大陸に到達した時点で船を破壊してもらい、そのまま突入していただきます』
「おい、ちょっと」
『進行方向はこちらから伝えるので、それに従って操縦してもらえれば――』
「ま、待つし! 操縦ってなんのことだし!」
ばつが悪くなったのか、王は一方的に通信を切断した。
「……あのクソオヤジ」
汚い言葉を吐いた直後、彼女は不意に疑問を抱いた。
「ってか、船を爆破したら帰れないんじゃね?」
しばらく考えた後、彼女はとりあえず手頃な相手に文句を言おうと、再び会議室に向かった。
そこではシアンが健気にも待っており、黙って部屋に入ってきたライカに会釈をした。
「少しは分かったし」
「では、ライカちゃんには破壊目標を――」
「ふざけんな! あんな船乗れっか!」
「……ですが、あの方法以外では近づけそうには」
歌姫は困ったような顔をするが、この電撃姫が気遣いなどするはずがなかった。
「は? ならあんたが乗ればいいし。あんなの船じゃないし!」
「いえ、わたしが乗り込んでも攻め込めないので」
「……確かに、そうだけど」
あまりに冷静な返しに、ライカは感情のやり場をうしなった。
「お父上を信じてください。きっと、大丈夫ですよ」
「ったく、他人事と思って好き勝手言って――っと、そういえばアタシはどうやって帰んの? 船を破壊しろって言われたんだけど」
ここでようやく同じ土俵に立てた――立ってくれた、かもしれない――と感じたらしく、シアンは安堵の表情を浮かべながら、作戦の説明に移った。
「ライカちゃんには兵器の破壊後、内部の指揮官を討ち取っていただきたいのです。帰りにつていは――仕事が終わる頃には迎えの船が到着していると思います」
「……つまり、アタシが切り札ってワケな」
「はい」
「ま、トーゼンじゃん?」
己の強大な力に酔いしれ、完全に盲目になったらしく、任された仕事量の多さにはこれっぽっちも気付いていないようだ。




