11e
――洋上、フォルティス艦隊の旗艦にて……。
「ミネアはいねーの?」ライカは問う。
「すみません。ですが、ミネアちゃんも作戦には参加しているので……」
「ま、どーでもいいし。そんで、アタシはなにをするわけ?」
ずいぶんとドライな対応だが、シアンからしても触れられたくない話題である為、むしろ好都合であった。
部屋にいるのはシアン、ライカの二人。本来であればここにミネア、フィアの二名が加わり、合計四名となるはずだった。
主力の一角が欠けたというのは、大きな損失にも思えるのだが、三国同盟の総司令でもあるシアンは落ち着いた様子である。
「ライカちゃんには、カルテミナ大陸の武装破壊をお願いします」
「へー簡単じゃん」
「……かなり危険な仕事です」
電撃姫は破壊という単語を聞き、得意分野だと軽く見積もっていたが、歌姫は油断を是とはしなかった。
「っても、敵艦で暴れてくるだけっしょ? 余計な的もないし、アタシの得意分野じゃん」
余計な的、というのが味方の兵である辺り、彼女も相当にひどい物言いをしている。
ただ、彼女の場合はまさしくその通りであるからして、安易に否定することもできないのだ。
「……ライカちゃん、どうやって大陸に突入するか、予想できますか?」
「船っしょ? ……あーでも探知できるってハナシだし、小さい船?」
「海中から突入してもらいます」
これにはライカも驚いたらしく、幼い総司令を二度見した。
「は? まさか泳いでいけって――」
「お父上から何か聞いていませんか?」
「あ? なんかスゲー船がある……とかなんとか言ってた気がするけど」
この杜撰さには、シアンも頭を抱えた。
「小舟ならば探知されない、という情報は間違いであることが判明しています」
「えっ? マジ?」
「はい、マジです。いくつかの種類を試しましたが、全てが撃沈されています」
人間が探知されている、という推測から導力による自律航行型が放たれたが、当然のように沈められている。
僅かな導力さえ察知できる、という意見によって帆船を用いたものの、これもまた無力であった。
これらがかなり小型――定員十名以内――であった為、水上からでは突破不可能、ということで結論が出たのだ。
そして、その対応策をラグーン王が提案し、それならばと採用が決定された。……その会議にはライカも参加していたのだ。
「んで、どんな船なん?」
「《武潜の宝具》ですよ。なんでも、水中に潜る船だとか」
こればかりはシアンも畑違いならしく、ライカの方が知っていると考えていたようだ。
ただ、反応を見る限り、両者間に知識の差はないと見える。
「苦しくなったり……しない?」
「大丈夫、らしいのですが」
「はぁぁぁああああ? どうしてらしいなんだし!」
「す、すみません! ですが、その船は試験運用をあまりしない方がいい……とのことで」
ずいぶんな物言いではあるのだが、こればかりは発案元であるラグーン側にも問題があった。
「大丈夫、ですか?」
「は? ねーわ、マジない」
「マジ、ないですか……」
「つーか、聞いてくる」
「は、はい……」
ライカは平然と――実際、かなり怒っているのだが――部屋を出て行き、会議室にはシアン一人になってしまった。
「……大丈夫でしょうか」




