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聖堂騎士を引き連れ、俺は城下町を進んでいった。
三人とも元同僚だけに、実力は知っている。こんな小さな問題の処理にしては過剰すぎるくらいだ。
「ディックは嫁さんがいるんだから、あんまり無理をするなよ」
「ハッ」
一応は元同僚だが、今は階級差がある。
それだけならばともかく、彼ら聖堂騎士は大抵が信心深い者達なのだ。神の右手とされる善大王に対しては、神に抱くそれに近い信仰を持っている。
ただ、そうした信心深さがあんまりない俺からすれば、その感触はいまいち伝わらないのだが。
問題の鍛冶屋に到着し、三人の聖堂騎士を入口で待機させた。
店の中に入り、商品を見て回った後、気になった一本の前で足を止める
「いい武器だ」
「お客さん、お目が高い……って、善大王様じゃないですか」
「どのようにしたらこのような武器が作れるんだ?」
「そりゃ、日々の努力ですかね」
一呼吸置き、俺は店主の顔をみる。
「エルフを使用した、違うか?」
明らかに顔色が変わる。どうやら、黒らしい。
「い、いえ何のことやら……」
「国の研究機関がエルフを欲しがっていてな、どうだ。譲ってくれないか?」
ここでは保護を口に出してはいけない。
エルフを所持していると聞けば、どこからかそれを奪いにくる者が現れるかもしれない。だからこそ、生きているものではない、という印象を与える必要がある。
「いえ、俺も鍛冶屋の端くれです。高い品質の武器を作る方が――」
そう言い、槌を構えてきたことを確認すると、指を鳴らした。それと同時に聖堂騎士が突入し、一瞬で店主を制圧する。
「こいつを連れていけ」
「善大王様は?」ディックは問う。
「俺は、エルフの救助をする。大丈夫、俺一人でどうにかなる問題だ」
三人は納得し、店主を連行していった。
改めて一人になった俺は、ウキウキしながら隠し部屋を探し出した。
エルフ、俺はそんな存在を見たことがないが、どんな見た目をしているのだろうか。
もしも可愛い幼女ならば、デートにでも誘おう。こんなところから助けだしたんだ、それくらいは許してくれるはずだ。
棚を退かし、地下通路へと続く道を降りていくと、狭い個室に辿りついた。
途端、凄まじい異臭が鼻を刺激し、不意に顔を強ばらせる。
地面には残飯のような食事が置かれ、蝋燭一本の照明、麻布が一枚というひどい環境が目に入った。
部屋の中を見渡してみると、怯え、震えている幼女を発見する。
体は骨のように細くなり、髪が荒れ、近日に洗われたような形跡は一つもない。
「……大丈夫? 助けにきたよ」
一見するとただの幼女と見分けがつかないが、白い肌や尖った耳を見るに、それがエルフであることが分かる。
「あなたは……わたしをいじめないの?」
「ああ、いじめない」
その言葉で緊張の糸が切れたのか、エルフは意識を失った。
哀れみながらも麻布を体に纏わせ、お姫様だっこで抱えたまま城へと向かう。
民の奇異の目が俺に突き刺さる。善大王がエルフを連れているのだから、その異常性は途轍もなく高いだろう。
城に戻り、医療施設に到着した俺は早速エルフを預けることにした。
「俺だ。この子を頼む」
「善大王様……この子は」
「エルフだ、大事に扱ってくれ」
一通りの仕事をし終え、俺は執務室へと戻った。
「善大王様、ご苦労様です」
「治安が良いはずの光の国でこんなことが起きるなんてな」
「他の国と比べれば少ないだけで、悪はどこにでもいますよ」
「……んなこと、分かっている」
置かれているソファーに座り込むと、俺は頭を抱えた。
「自国民を捕まえるなんて、良い気分じゃないな」
「暗部では良く対処しましたよ。それが苦しいというのであれば、そちらに仕事を頼んでください」
暗部の存在は当然承知の上だ。
割り切れないままに、俺は部屋を出た。