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大空のフィア  作者: マッチポンプ
前編 七人の巫女と光の皇
8/1603

2

 聖堂騎士を引き連れ、俺は城下町を進んでいった。

 三人とも元同僚だけに、実力は知っている。こんな小さな問題の処理にしては過剰すぎるくらいだ。


「ディックは嫁さんがいるんだから、あんまり無理をするなよ」

「ハッ」


 一応は元同僚だが、今は階級差がある。

 それだけならばともかく、彼ら聖堂騎士は大抵が信心深い者達なのだ。神の右手とされる善大王に対しては、神に抱くそれに近い信仰を持っている。

 ただ、そうした信心深さがあんまりない俺からすれば、その感触はいまいち伝わらないのだが。

 問題の鍛冶屋に到着し、三人の聖堂騎士を入口で待機させた。

 店の中に入り、商品を見て回った後、気になった一本の前で足を止める


「いい武器だ」

「お客さん、お目が高い……って、善大王様じゃないですか」

「どのようにしたらこのような武器が作れるんだ?」

「そりゃ、日々の努力ですかね」


 一呼吸置き、俺は店主の顔をみる。


「エルフを使用した、違うか?」


 明らかに顔色が変わる。どうやら、黒らしい。


「い、いえ何のことやら……」


「国の研究機関がエルフを欲しがっていてな、どうだ。譲ってくれないか?」


 ここでは保護を口に出してはいけない。

 エルフを所持していると聞けば、どこからかそれを奪いにくる者が現れるかもしれない。だからこそ、生きているものではない、という印象を与える必要がある。


「いえ、俺も鍛冶屋の端くれです。高い品質の武器を作る方が――」


 そう言い、槌を構えてきたことを確認すると、指を鳴らした。それと同時に聖堂騎士が突入し、一瞬で店主を制圧する。


「こいつを連れていけ」

「善大王様は?」ディックは問う。

「俺は、エルフの救助をする。大丈夫、俺一人でどうにかなる問題だ」


 三人は納得し、店主を連行していった。

 改めて一人になった俺は、ウキウキしながら隠し部屋を探し出した。

 エルフ、俺はそんな存在を見たことがないが、どんな見た目をしているのだろうか。

 もしも可愛い幼女ならば、デートにでも誘おう。こんなところから助けだしたんだ、それくらいは許してくれるはずだ。

 棚を退かし、地下通路へと続く道を降りていくと、狭い個室に辿りついた。

 途端、凄まじい異臭が鼻を刺激し、不意に顔を強ばらせる。

 地面には残飯のような食事が置かれ、蝋燭一本の照明、麻布が一枚というひどい環境が目に入った。

 部屋の中を見渡してみると、怯え、震えている幼女を発見する。

 体は骨のように細くなり、髪が荒れ、近日に洗われたような形跡は一つもない。


「……大丈夫? 助けにきたよ」


 一見するとただの幼女と見分けがつかないが、白い肌や尖った耳を見るに、それがエルフであることが分かる。


「あなたは……わたしをいじめないの?」

「ああ、いじめない」


 その言葉で緊張の糸が切れたのか、エルフは意識を失った。

 哀れみながらも麻布を体に纏わせ、お姫様だっこで抱えたまま城へと向かう。

 民の奇異の目が俺に突き刺さる。善大王がエルフを連れているのだから、その異常性は途轍もなく高いだろう。

 城に戻り、医療施設に到着した俺は早速エルフを預けることにした。


「俺だ。この子を頼む」

「善大王様……この子は」

「エルフだ、大事に扱ってくれ」


 一通りの仕事をし終え、俺は執務室へと戻った。


「善大王様、ご苦労様です」

「治安が良いはずの光の国でこんなことが起きるなんてな」

「他の国と比べれば少ないだけで、悪はどこにでもいますよ」

「……んなこと、分かっている」


 置かれているソファーに座り込むと、俺は頭を抱えた。


「自国民を捕まえるなんて、良い気分じゃないな」

「暗部では良く対処しましたよ。それが苦しいというのであれば、そちらに仕事を頼んでください」


 暗部の存在は当然承知の上だ。

 割り切れないままに、俺は部屋を出た。


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