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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
783/1603

10s

 一戦(ひといくさ)を終えて宿屋に戻ると、ウルスは眉間にしわを寄せた。


「こんなところで会うとは思ってなかったな」

「……はい?」


 受付を済ませた女性は声に反応して振り返るが、そこにいた者達を見て顔を青ざめさせた。


「げ、オッサンは……」

「闇の国も逗留(とうりゅう)中か?」

「ま、まっさかー」


 ごまかそうとしているが、内二名が彼女の悪行を知っているだけに、このような言い方では信用しなかった。

 そして、もう一人については別口として彼女を認知していた。


「──知り合い?」エルズは問う。

「ああ、闇の国に力を貸してた《火の月》だ」

「いやぁ、その(せつ)ははどうも──って、そこのチビっ子はあの時の!」


 まるで意趣返しのように、ウルスは魔女に「知り合いか?」と問い返した。


「前に光の国で会ったことがあるわ。確か、ライカ姫の護衛をしていたわ」

「そうそう、そういうことよ。あたしゃ信用があるからねぇ」


 彼女はエルズの豹変に追及しなかった。余計なことを言い、状況が悪化することを避けているのだろう。


「ってことは、雷の国はあの件とグルってことか」

「まぁ、それは否定しないでおくよ」


 三人はしばらく睨み合っていたが、一人だけ仲間はずれにされていたクオークは冷静さを保ち、ことを客観的に認識することができた。


「あ、あの」

「あァ?」

「なによ」

「あとにしといてくれるとありがたいんだけどねぇ」


 早速反撃を受けた術者だったが、エルズという容赦のない毒舌に付き合っていた為か、ここで折れることはなかった。


「あの、ここだと迷惑になるので……別の場所で続きを話しませんか?」


 言われてようやく、《選ばれし三柱(トリニティア)》達は気付いた。

 険悪なムードを察知し、受付の近くにある談話区画から多くの者が集まりだしたことに。


「そう、するか」


 アカリは断ることのできる場面であり、かつ関わりたくない面々ではあったはずだが、正々堂々と彼らの提案には応じた。

 新たな舞台として選ばれたのは酒場──ではなく、食堂だった。ウルス達からしても、今から話す内容は冒険者に聞かれて、百害あって一利なしなものだったのだ。


 なるべく人のいない場所を指定し、席に座ると、アカリが率先して食事を注文し始めた。


「おい」

「デートに誘うんなら、奢るくらいは礼儀じゃないかい?」

「そのつもりはないが」

「そりゃそうだろうさ。あたしを誘うなんて大胆なことをしたのは、そこの坊やなんだからさぁ」


 しばらく呆然とした後、クオークは自分を指さし、無言で確認を取った。その流儀に従うように、アカリも笑顔で頷いた。


「……なら仕方ないな。おいクオーク、お前の自腹だ」

「えっ!?」

「軽率な行動の報いね」


 それまで追いつめられていたはずの仕事人は愉快に笑い、対岸の火事だったクオークが火傷を負う結果となった。


「──で、どうなんだ」

「太っ腹な奢りに免じて、少しくらいは答えるとするかね。まず、闇の国はここにゃいないよ」

「その証拠は」

「奴らの弱り具合は、オッサンも知ってるんじゃないかい? そんで撤退したはいいものの、どうしようもないって状況になったわけさね」


 第五部隊の者達を焼き払ったのは、他でもないウルスであることから、この言葉はまさにその通りという内容だった。


「そんな時さ、奴らの本国から連絡があってねぇ──引き取って向こうに帰って行ったってわけさ」

「説明が(みじか)すぎる。もっと具体的に言え」

「そう急かすもんじゃないよ──おっと、料理も来たし、少しくらいは待ちなさいな」


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