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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
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 地面に寝っ転がったフィアは、当時以上にだらしない格好で怠惰さを最大限に表現していた。


「……フィアちゃん?」

「出てってよ」

「いえ、わたくしとしましては、フィアちゃんに起きていただきたいのですが」

「やだ、面倒くさい」


 ライムは《魔導式》を展開しようとするが、主が戻ったことで法則が正常化されたらしく、導力の放出さえ行えなくなっていた。

 こうなってしまうと、もはや彼女がどうにかできる問題ではなかった。


「善大王様が殺されたのであれば、仇を討つのが──」

「うるさい! 出てって!」

「憎くありませんの? 復讐しなくていいんですの?」

「知らないもん。そんなの知らないもん」


 精神操作に特化し、相手を操ることさえ容易く行う《闇の星》だが、ここまで聞く気のない者には無力だった。


「(善大王様の気苦労が知れますわ……)」


 単細胞のライカ、天性の引きこもりフィア、二人の二大巨塔は策略を巡らせるライムすらも翻弄している。

 ある意味、こうした駄目人間──二人とも方向性は違うが──というのは、どんな者よりも強いのかもしれない。


「……はぁ、フィアちゃんにいい話がありますわ」

「帰って」

「善大王様はまだ死亡していませんわ」


 それまで聞く耳を持たなかったフィアだが、都合のいい話題が来たと同時に聴力機能が回復したかのように、ライムの方を見た。


「やっぱりね。ライトが死ぬわけないもん」

「ですが、危険な状態です」

「出てって」


 どうにも、不都合な事実だけは聞きたくないらしい。典型的なヒステリー──攻撃性こそないが──の症状だ。

 ライムもこれは知っていたらしく、自分の発言を改めた。


「フィアちゃんだけ(・・)が、善大王様を助けることができますわ」

「私だけが?」

「ええ、善大王様を助ける機会ですわ」

「うん……うん!」

「善大王様を襲ったのは吸血鬼ですわ。その状況を教えてくださいます?」

「ライトが噛まれたの」


 ずいぶんと簡単な説明だが、彼女にとってはそれだけで十分だった。


「でしたら、アンデッドとなっている可能性が高いかと」

「どうしたらいいの?」


 《天の星》の力があるのだから自分で調べろ、と言いたげな表情をしたが、ライムは咳払いをしてから丁寧に語り始めた。

 きっと、突き放した態度を取ろうものならすぐさま引きこもりモードに戻る、と察しての対応なのだろう。良くも悪くも、ライムは状況の変化に柔軟らしい。


「天ノ百十四番・太陽陣(ソルドライブ)を使ってくださいまし」

「……人に当てて大丈夫なの?」

「(どうにか判断能力を取り戻しはじめていただけたようで……)」


 阿呆の相手を二連続でさせられることになった為か、彼女は明らかに疲弊し始めていた。


「大丈夫ですわ」

「うん、分かったよ。じゃあ試してみるの」

「はい、がんばってくださいまし」


 コクッと頷くと、フィアの姿が消滅した。

 周囲は依然として荒涼(こうりょう)としているが、それでもフィアが立ち直り始めていたのは確かだった。


「……こうした対応は、問題を起こした本人に行っていただきたいものですわ」


 誰もいない空間でそう言うと、フィアに続くように彼女も姿を消した。



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