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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
774/1603

生か死か、審判の光

 ──荒廃した地にて……。


 意識を強制接続したライカは、その光景を目にした途端、強い吐き気を覚えた。

 吐瀉(としゃ)することで不快感を取り除こうとするが、意識の空間でしかない為、吐瀉物どころか分泌液さえ出てこない。


 目に見える景色はミネアが恐れていた、七つに分かたれた断崖に近く、ライカが思い出すことのできる風景でしかなかった。

 ただし、彼女が想起したのは場面(・・)だ。その当時にはこれをみるだけの感覚が育ってはおらず、理解さえできなかったのだ。


 その理解不明こそが、黒いなにかとして記憶されていた。

 ただし、それは別段おかしいことではない。普通の人間であっても、理解できない情報は無意識に遮断され、記憶領域にさえ残らずに消え去る。

 彼女の場合は、その理解できないものさえも何かに見えるからこそ、異様な場面として記憶されていたにすぎない。


 今は違う。ここは違う。

 感じ取るだけの経験や技術を得たライカには、真実の情報が観測できてしまうのだ。似たような場面であっても、それに覚える感想は大きく乖離したものとなる。


「破滅……なにもかもを終わらせる何か(・・)がある」


 現実で感じたそれを遙かに上回る恐怖が彼女の体に浸透し、震えや吐き気が止まらなくなる。

 幾度と魔物と対峙し、それを打ち破ってきた彼女でさえ、この感情を抑えることができなかった。


「(これ(・・)はフィアなの? それとも、アタシの術が失敗したの? ……死ぬって、こういうことなのかな)」


 刹那、彼女は自身を客観的に見た。


「(……死ぬ? 死ぬほど苦しいけど、アタシはまだ生きてるし。動けないくらい痛いけど、まだ生きている──生きているなら、アイツみたいに動けるはずだし!)」


 客観的な視点と、過去に見た画像が重なった。

 いつ死んでもおかしくない状態にありながらも──圧倒的不利な状況であったにもかかわらず、その男が彼女に立ち向かった。


 それが決して不可能ではないと分かったからか、彼女は恐怖をほんの僅かにだが、確かに押しのけた。

 途端に視界が広がり、再び荒廃した大地が目に映る。


「(……フィアがいる?)」


 目をこするが、その姿は消えなかった。別の感覚で捉えたわけではなく、肉眼でフィアの存在を発見したのだ。

 しかし、皮肉な話である。いまの彼女にはそれまで見えていた何か(・・)が見えていないのだ。

 過去に無茶をした男を思い出すことで、彼女は目の前の現実を視界から消し去ったのだ。それによって、隠れていたフィアの姿が見えるようになった。


 走って近づいた後、彼女の体を触る。幸いながら、この空間内ではある程度の感触は存在している。

 その結果、倒れてはいるが生命活動が続いている、という事実を知ることができた。


「フィアは生きている……でも、誰がこんなことを?」

「それはわたくしにも分かりかねますわ」


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