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大空のフィア  作者: マッチポンプ
後編 ダークメア戦争
772/1603

21χ

 ──火の国、カーディナルにて……。


「なんだ、今のは」


 黒は唖然としながらも、そう言った。


「フィアちゃんが怒ってしまったようですわ」

「……天の巫女が? だが、奴にこんな力があるなんて聞いてねぇぞ」

「ええ、わたくしも驚いていますのよ」


 そう言いながらも、ライムは落ち着いた様子で紅茶を口にした。


「おい白、どうなってンだ」

「私にも分かりません。ですが、魔物以上に危険な存在だとは思います」

「……ったく、トニーの奴はなにしてやがンだ」


 三人は落ち着きを取り戻したのか、いつものような様子に戻っていた。


「おい、テメェらもさっさと起きやがれ」


 床に倒れていたのは、この都市の次期領主であるアリトだった。

 椅子からずり落ちこそしていないが、キリクも胸を抑え、未だに会話できる状態ではない。


 フィアがもたらした異常現象は、遠く離れたカーディナルの地にまで影響を及ぼしていた。

 そして、その干渉は《選ばれし三柱(トリニティア)》の命さえも奪いかねない、恐るべきものだった。


「クソガキ、テメェは事情を知ってるみてぇじゃねぇか。さっさと言え」

「あら、わたくしの言葉は戯言と思われたのでは?」

「……あいつらがあの様子だ。しばらくは話も進まねぇンだから、少しくらいは聞いてやる」

「力の根元はフィアちゃんで間違いありませんわ」


 もとより話す気だったかのように、ライムは前口上を省いた。


「その根拠はなんだ」

「あの感触が、昔のフィアちゃんを思い出させるから──という返答で十分でして?」

「どういうことだ」

「フィアちゃんはずっと昔、《星》の中でも恐れられた存在でしたわ。破滅的で、絶望的で……まるで、誰かが乗り移っていたかのような」

「……《天の星》は神の代行者のはずだ。そんな奴に乗り移ることが可能だとは思えンが」

「いえいえ、これはわたくしの個人的な意見なので。実際はどのような理由だったかは分かりませんわ」


 結局は有耶無耶、彼女の話す内容はどこか曖昧さを持ち、具体性を意図的に排除したようなものだった。

 白はそれに気づいたらしく、口を挟んだ。


「あの力はなんだったのでしょうか?」

「負の力でしたわ。それも、混じりけのない純粋な」

「……導力ではないようですが」

「ええ、わたくしも負の力(・・・)としか表現できませんわ。ソウルでも導力でも、魔力でさえない──純粋な何らかのエネルギー、という認識で十分ではなくて?」

「親父のあれと同種のものか?」


 善大王とは違い、ダークメアは幾度も《皇の力》を利用していた。組織内で使用されることもあった為に、黒はその力の正体を察していたのだ。


「善大王は正エネルギー、親父のは負のエネルギーを放出する。だとすれば、それと同じものと考えてもいいのか?」

「明確には違うものと思われますわ。それはあの効果からも分かることかと」


 善の象徴、悪の象徴とされる《皇》以上にその力を行使するものがいるはずもない、と彼女は言っていたのだ。


「なら、さっさと消しちまう方がいいってことか」

「しばらく様子を見たほうがよろしいかと」

「あァ? オレに指図するつもりかァ?」

「警告……いえ、注意喚起ですわね。少なくとも、先ほどの干渉は何者かによって阻止されたと見えますわ。ですが、その直後に刺激しようものなら、再び暴走してしまうかと」


 これには黒も反論しなかった。

 いくら彼が凶暴な性格だとしても、自分を蝕んだ力を過小評価するほどに盲目ではない。


「あのガキには手を出すな、ってことか? お友達ごっこじゃねえンだぞ」

「少なくとも、いまはその時期ではないということですわ」


 飄々としたライムは軽く躱すばかりで、やはり真実を語ろうとはしなかった。


「なら、何者かってのは誰だ? 口振りからするに、知ってンだろ?」

「……世界の破滅が不都合となる()、ですわね」

「ハン、そんな奴がいるなら会ってみてぇもンだな。オレ達に楯突(たてつ)けねぇような利口(ヘタレ)な奴だろうがな」

「そうとも言い切れませんのよ? ……ただ、助平(すけべい)ではあるかもしれませんわね」


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