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「ライトの馬鹿……最低」
フィアはただ一人、悲嘆に暮れていた。
「でも、このままだと、本当に嫌われちゃうかも……」
他でもない、フィアは善大王に嫌われることを恐れているのだ。
自分を城から連れ出してくれた人間であり、自分だけの王子様。どんなときでも守ってくれる、そんな理想的な存在。
「ライトに嫌われたくない。でも……どんな顔して会えばいいの」
善大王が相手をしなかったのが悪かったとはいえ、あのような方法で逃げてしまえば嫌われてしまう、と危惧していたのだ。
いままで引きこもり生活をしていたフィアだが、それくらいは理解していた。ただ、理解はしているが。割り切れはしない。
「ライトが謝りにくるまで、絶対に帰らないんだから」
意地を張ったフィアは地面に座りこんだ。
しばらく経つと腹が鳴りだした。まだ昼食をしていなかったのだ。
「どこかで食事を……」
不意に、フィアは金を持っていないことに気付いた。城にいる限りは無料で用意されるので困らなかったが、城下町では代金が必要だ。
「お城に……いや、絶対に帰らない!」
口では気丈に振る舞っているが、顔は困り顔になっていた。
「き、君……一人?」
妙に口ごもったような話し方の男が現れた。中太りだが、着ている服は一般の民よりも豪華だった。
「えっ……え、まぁ……うん」
長い引きこもり生活の結果か、フィアは対人恐怖症を取得していた。
目線が泳ぎ、今にも会話を終わらせたいと願っているが、男は続ける。
「ぼ、僕のお家に来ない? お菓子もあるよ」
「お菓子……でも、お金ないわ」
「大丈夫。タダでいいから」
それを言われ、フィアは安心しきった。
これで城に戻らずに済む。さすがは光の国、善意に満ちた人達がいるものだ、と喜びながら男についていった。