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大空のフィア  作者: マッチポンプ
前編 七人の巫女と光の皇
70/1603

6

 善大王は導力を込めた指で空を叩いた。ピアノを演奏するように、規則的な動きで。

 すると、甲高い音が鳴り、善大王の体がふわりと浮き上がった。


「と、まぁこんな風に《魔技》は光属性の《導術》に存在しないような現象を呼び出せる。風属性で似たことができるが、誰でも使えるというのが大事だな」


 指を鳴らした途端、善大王の浮遊は解除された。


「《魔技》は才能──つまり、属性に影響されない。技術さえ身に付ければ、基本的に誰でも使用できる。ただ、言った通りに攻撃性や防御性などは低い。効果も《導術》には及ばない」


 そこまで言い、善大王は窓の傍に寄り、クラスの全生徒を呼び寄せた。

 全員が窓の外に目を向けた途端、善大王は指を鳴らし、黄色の光を散らした。

 瞬間、学園の入り口にある大きめな広場には巨木にも相当する、黄色に輝く光のゴーレムが出現した。


「わぁあああ!」

「なにあれ!」

「すげー」


 善大王は満足げな表情を浮かべ、もう一度指を鳴らしてゴーレムを消し去った。

 促されるままに生徒は席に戻っていき、善大王は授業を再開した。


「今のようなことも《魔技》は可能だ。見えなかったと思うが、広場の各所に《呪符》を設置して置いたんだ。その枚数、五百枚」


 途方もない数に驚き、生徒達は息を呑む。


「先ほど説明した、準備というのはこれだな。《呪符》を配置した広場に限られるが、あのようなゴーレムを召還することもできる。言うまでもないが、《導術》でそれだけの準備をすれば上級の後半どころか、最上級術も使えるかもしれないな」


 善大王の見立てであれば、あのゴーレムの戦闘能力は上級術の序盤と同程度の活躍をするのが限界。場所も限局されることも含まれれば、実戦の範疇には収まらない。


「ここで重要なのは、《魔技》が独自性を持っていることだ。今回はゴーレムだったが、龍型や人型、獣型を出すことも可能だ。《魔技》は形式に縛られず、自由に効果を作り上げられるもの、ということだな」

「でも、《導術》の方が強いですよね?」

「まったくもって。だが、この《魔技》は瞬間的な力を是としていない。長い年月を費やし、《導術》を越えるような術を開発する者もいる。そして──これは秘密なんだが、《光の門》もまた、《魔技》によって構成されている構造物だ。遥か昔に作られたとは思えない程に、精密な導式が刻まれている」


 《光の門》と言われているが、実際はこの光の国全体に《魔技》の効果は現れている。もちろん《魔導式》などは存在せず、地面に使われる石材などに導式が刻み込まれているのだ。


「とりあえずだ。総合するに、一般的には《導術》を使い、それでもどうしようもならない際には《魔技》を使う、それくらい覚えておけば十分だ」

 締めに入ったが、とても重要なことを忘れているのではないか、と言わんばかりに生徒達は声を上げた。


「《超常能力》についての説明はないんですか?」

「最初に言ったと思うが、今回は術の講義だ。術は《導術》と《魔技》のこと、《超常能力》は能力ということで例外だ」

「教えてくださいよ!」

「僕も聞きたい!」


 期待の声が多かったが、善大王は黒板を全て消した。


「俺は確定できないことを言うのはあまり好きじゃない。《超常能力》についてはまさにそれで、真相が未だに解明されきっていないだけに、教えたくないんだよ。時代が進んだ後に、あの時と違ったじゃないか、なんて格好がつかないだろ?」


 善大王は砂時計が全て落ちきったことを確認すると、咳払いをした。


「では、今回の臨時講義はここまでだ。皆がこの光の国の為に働いてくれることを期待している」


 授業が終わり、生徒は帰りの支度を始めた。善大王に話しかける生徒も多かったが、彼はそれに多くは応えず、最小限に済ませていた。

 帰ろうとした女子生徒に目を付けると、善大王は近づき、声を掛けた。


「夕刻、またここに来てくれないか?」

「えっ」

「君は見所がある。特別な講義を付けてあげよう」


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